大規模ソーシャルゲームを
支える基盤サーバー
サイバーエージェントが大手ベンダーを選ばなかった理由
株式会社サイバーエージェント
大規模ソーシャルゲームを
支える基盤サーバー
サイバーエージェントが大手ベンダーを選ばなかった理由
株式会社サイバーエージェント
ソーシャルゲームサービスの基盤サーバを刷新
サイバーエージェントは、コミュニケーションサービス「アメーバピグ」内のソーシャルゲームサービスの基盤サーバを刷新した。その背景や製品選定のポイントは何か。同社担当者に聞いた。
コミュニケーションサービス「アメーバピグ」のアバターを利用したソーシャルゲームサービス「ピグライフ」を2011 年6 月から提供しているサイバーエージェント。2012 年5月には「ピグアイランド」、さらには同年8月に「ピグカフェ」、同年11月には「ピグ ワールド」を開始するなど、矢継ぎ早に新たなソーシャルゲームサービスをリリースしている。
同社では、これらの新サービス拡大に当たり、急増するゲームデータの処理に最適なデータベース基盤の構築を検討。ピグライフのサーバ環境や運用に生じていた課題を踏まえ、データ処理の高速性、ラックへの集積度の高さ、スケールアウトできる拡張性、カスタマイズの容易さを重視。新たなサーバ環境へ刷新したという。
ピグライフのデータベース基盤としてサイバーエージェントが当初利用していたのは、欧米や国内大手ベンダーのサーバだった。だがシステム基盤刷新にあたり同社が採用したのは、大手ベンダーと比べ、規模は小さいものの、個性的な製品作りを進めるベンダー のサーバだったという。
同社が導入したサーバとは何か。導入の狙いは。導入までの経緯と選定の理由を聞いた。
サイバーエージェントが2012年5月に開始した「ピグアイランド」は、アバターを使って材料を収集したり、工作をしたりしながら自分の島を作っていくゲームだ。ピグアイランドのユーザーデータは、サイバーエージェントのデータセンターにホスティングしているサーバに格納し、同社が管理している。データベースには、NoSQLのドキュメント指向データベース「MongoDB」を採用し、複数サーバによるデータの水平分散処理を実現している。
同社は、2011年6月スタートの「ピグライフ」に続くソーシャルゲームサービスとして、上述したピグアイランドに加え、2012 年8 月には喫茶店作りゲームの「ピグカフェ」、11月には街作りゲームの「ピグワールド」と、2012年に合計3つのサービスを相次ぎリ リースした。ユーザー数は、ピグアイランド、ピグカフェ、ピグワールドを合わせて約500 万人。順調にユーザー数を伸ばしている。
サービス増加に耐えるデータベース基盤が必須に
こうした新たなサービスを展開する際、「ピグライフのサーバ環境をそのまま使い続けるのではなく、肥大化するゲームデータの処理に最適な、新しいサーバの導入を検討する必要があった」と語るのは、サイバーエージェントアメーバ事業本部 プラットフォーム部門 インフラ事業部 サービスインフラグループの桑野章弘氏だ。
桑野氏がこうした判断に至ったのは、新サービスの提供を進めるに当たり、従来のサーバにおいて幾つかの課題を抱えていたことがある。
ピグライフのデータベース基盤には、これまで大手ベンダーの1Uサーバを使っていた。だが「消費電力が大きく、1ラックに搭載できるサーバ台数も限られていた」(桑野氏)。また、「スケールアップ型で容易に拡張できないことに加え、SASドライブのディスクアクセスがボトルネックとなり、MongoDBの分散処理能力を生かし切れていなかった」とも明かす。さらに、ユーザーデータの増加に合わせて、同社エンジニアがディスク容量を増設する際のカスタマイズ性も課題として浮かび上がっていたという。
こうした課題を解決すべく、
- ラックへの集積度の高さ
- データ処理の高速性
- スケールアウトできる拡張性
- カスタマイズの容易さ
を必須条件として、新規サーバの選定を実施。最終候補に残った3社の中から、サードウェーブテクノロジーズ(現ドスパラ法人事業部)(以下、サードウェーブ)のフルカスタマイズサーバ「ExPrime Server R-280-HW」の導入を決めた。新データベース基盤は、2012年4月から本格稼働している。
最終選定に当たっては、大手ベンダーも有力な候補に挙がっていたという。「比較検討した結果、今回の選定条件にベストマッチしたのは、大手ベンダーではなくサードウェーブのサーバだった」と、サイバーエージェント アメーバ事業本部 プラットフォーム部門 ピグ事業部 コアシスグループの齋藤 匠氏は話す。
カスタマイズ性の高さを評価し、大手ベンダーのサーバから移行
サイバーエージェントが大手ベンダー製品ではなく、サードウェーブのExPrime Server R-280-HWを採用した決め手になったのは、カスタマイズの容易さだ。大手ベンダーのサーバは、ユーザー企業が独自でカスタマイズすることが前提となっておらず、内部設計が複雑なことが多い。 これに対してサードウェーブのサーバは、内部設計が比較的シンプルで、“自作サーバ”のような感覚でカスタマイズできる。ケースもツールレスで簡単に取り外すことができ、メンテナンスも容易だ。こうした優れたカスタマイズ性とメンテナンス性は、大手ベンダーの製品にはない魅力といえよう。
ExPrime Server R-200-HW
高いラック集積度も評価した。ExPrime Server R-280-HWは、1Uハーフサイズの省スペース設計と、アイドル時38ワットという低消費電力により、一般的なサーバと比べて高いラック集積度を実現する。さらに、省スペースながら拡張性にも優れ、スケールアウト型でシームレスに性能を拡張することが可能だ。
「MongoDBはCPUへの負荷が少ないため、CPU性能をそれほど必要としない。一方で、サーバ台数が多ければ多いほど処理能力を高めることができる。その意味で、高集積度と拡張性、さらには低消費電力をも兼ね備えるExPrimeServer R-280-HWは、MongoDBの分散処理能力を最大限に引き出せるサーバだと判断した」(齋藤氏)
さらに齋藤氏は、「ベンダー構成だとなかなかできない、マザーボードのSATAポートへの直接接続ができることがメリットだ。古かったり安価なハードウェアRAIDだと、SSDの性能の足を引っ張ることが多い。ハードウェアRAIDではなくソフトウェアRAIDを組むことで、SSDの性能を引き出すことができる」と続ける。「耐障害性は、もともと使用しているアーキテクチャで担保していることもあり、パフォーマンス重視でRAID 0構成にした。サードウェーブのサーバは柔軟性に富んでおり、こうした構成を組むのが容易だった」(同氏)
大規模ソーシャルゲームをスムーズに運用可能に
サイバーエージェントは現在、ソーシャルゲームサービスごとにExPrimeServer R-280-HW 約70 台を活用してデータベース基盤を構築(図)。ピグアイランド、ピグカフェ、ピグワールドの3サービスで合計約500 万ユーザーのデータを6人のデータベースエンジニアが運用管理している。
桑野氏は、「各ソーシャルゲームサービスとも、オープン当初から多くのユーザーが利用したが、膨大なゲームデータを少人数でスムーズに管理できている。サードウェーブのサーバを導入した効果は大きいと実感している」と、導入効果を説明する。
今後は、各ソーシャルゲームサービスの内容を充実させ、さらなるユーザー数の拡大を目指す考えだ。これに伴い、サーバのストレージ容量も増設する必要がある。「その際、ラックにスライドレールを設置してもらえるとうれしい。サーバが取り出しやすくなり、メンテナンス性がさらに向上するはず」と、桑野氏はサードウェーブにリクエストする。こうした声に応え、サードウェーブはラックの改良を進めているという。
サイバーエージェントが選んだ「ExPrime Server R-280-HW」
今回、サイバーエージェントがソーシャルゲームサービスのデータベース基盤として採用したExPrime ServerR-280-HWは、サードウェーブが専用ホスティングサービスへの導入実績を基に開発した、データセンター向けフルカスタマイズサーバだ。
チップセットには「インテルC204チップセット」を採用。CPUには、「インテルXeonプロセッサーE3-1200製品ファミリー」から第2世代の「インテルCore i3プロセッサー」まで、13種類のラインアップを用意している。
メモリは、最大32Gバイトまで搭載可能。ディスクはホットスワップに対応しており、2.5インチのSATAディスクやSASディスク、SSDを最大2台搭載できる。なお、内部には、USBメモリの搭載が可能なUSBポートを1基用意。サーバ仮想化のハイパーバイザーのインストールなどに利用可能だ。
高度なカスタマイズ性と高いラック集積度で、サイバーエージェントのサービス基盤として選ばれたExPrimeServer R-280-HW。サーバの新規導入や刷新を考える企業にとって、検討の価値がある製品といえるだろう。
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