中国計器工業株式会社（以下、中計工）は、画像解析システムによる魚の計測に、株式会社フューチャースタンダード（以下、フューチャースタンダード）の映像解析AIプラットフォームを採用。サードウェーブの堅牢かつ高性能なワークステーションを活用し、大幅な検知率向上とそれに伴う効率化を実現した。

中計工の北山順仁氏は、「川面の光の反射や波のゆらぎ、ゴミなども検知してしまい、正解率は10%程度でした。川を移動するアユはピーク時には1日1万匹を超え、2週間ごとに5万枚程度の静止画像の確認が必要です。結局改めて人が確認しなければならず、2、3人で2、3日かけていました」と語る。

画像解析の精度を高めるため、同社はAIの活用を目指した。その際こだわったのが、業者任せにせず、自分たちでAIを理解し、応用できるようにすることだ。そのパートナーとして同社が選んだのが、映像解析AIプラットフォーム「SCORER（スコアラー）」を提供するフューチャースタンダードである。SCORERは、デバイスやアルゴリズムなどのパーツを目的や用途、予算に合わせて組み合わせ、カスタマイズして利用できる。今回は中計工の希望もあり、モデルの作成は行わず、プラットフォームの提供とコンサルティングや学習サポートに徹した。

本格運用を2023年4月からと定め、前年の9月ごろから学習を開始した。学習にあたっては、フューチャースタンダードがレクチャービデオを作成し中計工に提供。社内教育の手間とコストを低減した。フューチャースタンダードにとっても初めての試みで、今後同じように自走を望む企業へ展開する際のノウハウを蓄積できている。本格運用後は大幅な検知率の向上と、それに伴う効率化が実現した。北山氏は、「光や波を起因とする誤検知はほぼなくなりました。アユと同じような形のゴミを誤検知することもありますが、一定の掛け率でほぼ正確な数を推定できるようになっており、すべての画像を確認する作業からは解放されました」と成果を語る。

この映像解析システムは、撮影現場近くに設置した計測用サーバーと本社に設置した学習用サーバーで構成されている。計測用サーバーから学習用サーバーにデータを送って解析。結果を計測用サーバーに戻して解析を行う。これを繰り返すことで、解析精度を向上できる。

この2台のサーバーとしてフューチャースタンダードが選定したのが、「THIRDWAVE Pro WORKSTATION X2612」である。その理由をフューチャースタンダードの小林 仁氏は、「計測用サーバーは川が近く虫や湿気が多い過酷な環境に設置するため、高い堅牢性が必要でした。AI学習では1週間連続運転することもあり、高い可用性も必要です。通常のデスクトップPCでは耐久性に不安があり、各社のワークステーションを比較検討したところ、性能と価格のバランスが良く、これまで社内での検証などに利用して実績があったサードウェーブに決めました。たまたまタイミングよく即納してもらえたのも助かりました」と語っている。なお、より高いパフォーマンスが求められる学習用サーバーには、プロフェッショナル向け高性能GPU「NVIDIA RTX™ A4000」を2枚搭載している。

中計工は、今回の経験を害獣対策や生態系保護など様々な用途に水平展開していく。