国内最大級のLEDウォールで
新たな映像制作技術に挑む
“東映 バーチャルプロダクション部”のVFX制作現場を支えるraytrek
東映株式会社
国内最大級のLEDウォールで
新たな映像制作技術に挑む
“東映 バーチャルプロダクション部”のVFX制作現場を支えるraytrek
東映株式会社
課 題
・速さに加えて、業務を止めない高い安定性が必須
・さまざまなニーズに応える拡張性が必要
ソリューション
・体感できるほどのパフォーマンスの高さ
・ホコリ除去も容易なメンテナンス性の高さ
高さ5m全周30mの巨大なLEDウォールを備え、新しい映像制作技術の研究・実践に取り組む東映 バーチャルプロダクション部。解像度19,200×3,200のLEDに映す実写・CG素材のデータ検証や作成など、先進的な取り組みで使用されているのが、サードウェーブ製の高性能PC raytrek(レイトレック)だ。部署の総責任者であるプロデューサーの樋口 純一氏、実際にraytrekを活用するVFXディレクターの石原 翔太氏、システム管理者の添田 孝太郎氏に、サードウェーブ製PCの魅力、導入のメリットなどを聞いた。
インタビュー参加者
- プロデューサー 樋口 純一氏
- VFXディレクター 石原 翔太氏
- システム管理者 添田 孝太郎氏
新たな撮影方法に取り組むバーチャルプロダクション部
─バーチャルプロダクション部について教えてください。
樋口 純一氏(以下、樋口氏) バーチャルプロダクションは、巨大なLEDに背景を映し、その前で役者が演技をする新しい撮影方法です。海外ではこの技術が進んでおり、日本でも導入が必要と考え、東映としても技術や知識を蓄積するため、2022年10月にこの部署を設立しました。現在は映画やドラマへの活用や、撮影の効率化を測るためのさらなる技術開発を進めています。新しい技術やトレンドを取り入れ、映像制作に応用していくチームが私たちバーチャルプロダクション部です。
株式会社東映 バーチャルプロダクション部 プロデューサー
樋口 純一氏
─LEDウォールについて教えてください。
樋口氏 LEDパネルはAOTO製で、地上のLEDウォールと天井に吊るされたビジョンの2つで構成されています。高さは5メートル、全周が30メートルのLEDディスプレイシステムです。LEDウォールは600枚、天井ビジョンは216枚のLEDパネルで構成され、270度ラウンド型、解像度は19,200×3,200です。
高さは5メートル、全周が30メートルのLEDディスプレイシステム。
─かなり大がかりなシステムですね。基本的なバーチャルプロダクションの流れはどのようなものなのでしょうか。
樋口氏 LEDウォールは現状では国内最大級です。また、撮影所内にあるステージとしても間違いなく最大です。使用しているシステムやLEDは世界的にはライブイベントなどで使われることが多いですが、私たちは映画・ドラマに特化したバーチャルプロダクションやインカメラVFXに力を入れていこうとしています。
石原 翔太氏(以下、石原氏) 基本的に、LEDに背景を映し、その前で役者が演技をし、それを撮影します。グリーンバックとは異なり、撮影後すぐに完成するのが大きなメリットです。背景は実写を撮影してLEDに映す場合と、背景を全部もしくは一部CGで作る場合があります。私たちの部ではCGが多く、その背景に映すCGを制作する際のPCにraytrekを使用しています。
株式会社東映 バーチャルプロダクション部 VFXディレクター
石原 翔太氏
─LEDの前で役者の方が演技をし、撮影をされるのですね。実写の取り込みについて教えてください。
石原氏 解像度が19,200×3,200と非常に大きいため、カメラ1台ではまかなえません。複数のカメラで撮影し、それを繋ぎ合わせる作業をPCで行います。19Kの素材を作成するため、高いマシンスペックが要求されます。また、撮影した画像から3DCGモデルを作成する「フォトグラメトリー」なども行っており、これらの作業にもraytrekを使用します。
raytrek 4CZ49を使用してUnreal Engineの操作を行う石原氏。
※インカメラVFX:カメラに合わせて仮想空間のカメラが動き、その仮想カメラが写し出した映像がLEDウォールに表示されて、その前にいる被写体と一緒に現実のカメラが収録する仕組み
※フォトグラメトリー:写真からリアルな3DCGを生成する技術。対象物をさまざまなアングルから撮影・解析、複数のデジタル画像を統合して立体的な3DCGモデルを作成する
高性能と拡張性が採用理由、迅速で柔軟な対応も評価
─高性能PC「raytrek 4CZ49」を導入した経緯を教えてください。
添田 孝太郎氏(以下、添田氏) CGを制作するモデラーチームから「PCが遅い」と不満が出ていたため、raytrek 4CZ49を今年の1月に購入しました。以前からサードウェーブさんのPCは多く利用しており、昨年はスタジオでの作業用にRTX A6000を搭載したモデルも購入しました。そのほかの業務にもサードウェーブさんのPCを多く購入しています。サードウェーブ製のPCを購入する一番の理由は、これまでの導入実績と拡張性の高さです。他社から同スペックのPCを借りたこともありましたが、私たちの業務ではPCを拡張することがよくあり、その点でうまくいかなかった経験があります。raytrekは拡張性に優れていて、私たちにとって最適と考えています。
株式会社東映 バーチャルプロダクション部 システム管理者
添田 孝太郎氏
作業の現場で使用されているraytrek 4CZ49。
樋口氏 サードウェーブさんとは長くお付き合いさせていただいており、レスポンスが早いのも嬉しい点です。見積もりを依頼するとすぐにご連絡いただけて、納期も早いです。
業界的にですが、急に話が決まったり、映像制作の優先度が上がったり、ハイエンドなPCやパーツが急に必要になることがあります。そういった場合でも、サードウェーブさんは迅速かつ柔軟に対応してくれ、今私たちが求めているものを的確に提案してくれますので、ありがたいです。
添田氏 マザーボードやワークステーションモデルのグラフィックボードへの変更など、PCの構成変更にも柔軟に対応してくれる点も助かっています。
サードウェーブの対応について語る樋口氏。
─昨年の秋頃、グラフィックボードを「RTX A6000」に構成変更してご購入いただきましたね。
添田氏 はい、スタジオでの作業用に購入しています。当時はインテル Core i7、インテル Core i9などのCPUと、ワークステーションモデルのGPUであるRTX A6000を組み合わせたPCはあまり発売されていませんでした。
今回の東映のような用途では、そういった組み合わせが費用対効果に優れると考えられたため、Webには掲載がありませんでしたが、直接サードウェーブさんに相談し、導入しました。
樋口氏 とくにバーチャルプロダクションではUnreal Engineのようなゲームエンジンを多く使うので、CPUよりもGPUに高性能を求めることが多いです。またRTX A6000を購入したのは、スタジオで使用するdisguise製のメディアサーバーがグラフィックボードにRTX A6000を搭載しているため、データの検証用にも同じGPUを搭載したPCを使いたいという要望があったからです。
石原氏 スタジオではリアルタイムでグレーディングを行います。またカメラのSDI OUTに接続するDeckLinkキャプチャーカードを追加するなど、後から拡張の要望も出てくるため、現場で使用するPCには拡張性も重要です。
※ グレーディング:色彩の補正などの画像加工処理
※ SDI OUT:業務用映像機器で使われる高速シリアルインターフェース規格
※ DeckLink:主にビデオアプリケーションの開発に使われるBlackmagic Design社製のキャプチャーカード
raytrekなら「やりたいことはほとんどできる」と高評価
─raytrek 4CZ49は、CPUにCore i9-14000K 、GPUにGeForce RTX 4090 24GBを搭載したモデルですね。スペック選びのポイントは何かありますか。
添田氏 最高グレードのGPUは必須です。グラフィックボードのVRAMは多いに越したことはありませんが、コストも考慮してベストなものを選択しています。
樋口氏 現行では主にRTX 4090を搭載したraytrekを使用することが多いですね。拡張性の高さも含めて、raytrekなら「やりたいことはほとんどできる」と思っています。ちなみにグラフィックボードについては、新しいGPUが出たときには必ず1台か2台は導入して、性能や安定性、使い勝手を試しています。
─その他のパーツやストレージに関してはいかがでしょうか。
添田氏 どのパーツもほぼ最上位構成で依頼しています。メモリはあればあるほど効率が良く、とくに大規模なコンテンツでは多くのメモリが要求されますので、可能な限り上限近くまで搭載しています。
─raytrekの拡張のしやすさについてはいかがでしょうか。
添田氏 拡張しやすいです。拡張カードとストレージを追加することが多いですね。他社のPCでは拡張領域が限られていることも多いため、サードウェーブ製のPCはその点で融通が利きやすいです。特にSDIキャプチャーカードやDeckLinkのカードはよく使います。あとは内蔵のM.2 SSDを複数枚挿すための拡張カードや、10Gbase-Tのインターフェイスカードなどを挿すこともあります。
拡張性について好評を得たraytrek 4CZ49のケース内。
─raytrekのメンテナンス性やその他の利点についてはどうでしょう?
添田氏 ケース前面下、側面、天面、底面の吸気口にはホコリを防ぐフィルターが設置されていて、簡単に取り外しできるのでメンテナンスが非常に楽です。わざわざケースを開けずに掃除できる点が良いですね。またサポート金具もしっかりしているので、PCを外に持ち出す際にも安心です。グラフィックボードがずれる心配がありません。
簡単に取り外しできるのでメンテナンスが非常に簡単なフィルター。
ストレスのない作業がより良いものを生み出す
―作業ではUnreal Engineを使われることが多いとお聞きしました。
石原氏 多いですね。基本的にLEDウォールの描画はUnreal Engine 5で行いますので、そのシーンはCGを制作するモデラーチームで作ったものを持ち込む形になります。
―raytrekの使い勝手はいかがですか?
石原氏 前のPCと比べてスペックが向上しているので、レンダリングなどの速度も大幅に速くなりました。グラフィックボードのVRAMが多いのも助かっています。ハイポリゴンのものを使っても重くならず、フォトグラメトリーでは10億ポリゴンや700億ポリゴンのモデルを扱うことがあって、そうした時にもPCが落ちることはありません。通常では扱わないほど多くのポリゴン数でも安定して動作するため、非常に助かっています。
※ ポリゴン:3DCGにおいてモデリングに使われる3次元空間の多角形で、コンピュータ上で3Dオブジェクトを表現する基本単位。
raytrek製品について語る石原氏。
―速さにご満足いただいているのですね。
樋口氏 今回のraytrek 4CZ49導入については、以前使っていた3090から4090へGPUがスペックアップしていますから、スピードが上がっているのは間違いありません。実際の数値は測っていませんが、体感的に分かるほど、間違いなく速くなっています。
石原氏 速さというより「安定してできる」という方が正しい表現ですね。単純な速さだけでなく、止まったり落ちたりせずに、安定して使い続けられることはとても大事です。
添田氏 サードウェーブさんは顧客の要望を汲み上げて商品に反映するのが早く、好意的に見ています。
―最後に、PC導入に悩まれているクリエイターの方へメッセージをお願いします。
樋口氏 速いPCを入れることで作業が楽になります。もちろんコストや会社の方針もありますが、導入した方がいいです。
石原氏 ストレスから解放されることが一番大事です。raytrekを導入することでストレスなく作業ができるのでオススメです。
樋口氏 ストレスが作業スピードの遅れに繋がり、結局無駄なコストがかかることになります。クリエイターがストレスない環境で働ければ、高性能なPCで速く作業を終えられますし、より良いものができるかもしれません。その環境を作るのは会社の役割だと思っています。
添田氏 昔は廉価なPCを何度も購入していましたが、当時のトラブル対応と今のサードウェーブさんの対応を考えると、今の方が遙かに安心です。すぐに必要なくても後々のことを考えると、安定性を考えてもコストパフォーマンスは高いと思います。
樋口氏 PCは決して安い買い物ではないですが、サードウェーブさんのPCはコストパフォーマンスが良いと思います。柔軟性や対応力を考えれば、選択肢として間違っていないと考えています。
―本日はありがとうございました。
導入機器紹介
※印がついている項目はカスタマイズスペックです。
高負荷環境で制作を行う方に向けに最新パーツを使用し、安心して作業を行えるハイパフォーマンスPCを提供。必要なスペックを実装できるカスタマイズ性を保持し、ユーザーの希望に寄り添った制作環境を提供。幅広い用途に最適なスペックを提供し、動作検証済みで安心して使用できる。
お客様紹介
東映株式会社
東映のバーチャルプロダクション部は、東京撮影所で2022年10月1日に設立。先端技術による新しい映像制作技術の研究に取り組み、国内最大級のLEDスタジオが本格的な始動に向けてさまざまな実証実験を進めている。
設立 | 1949年 |
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所在地 | 東京都中央区銀座3丁目2番17号 |
企業HP | https://www.toei.co.jp/ |
東映のバーチャルプロダクション部は、東京撮影所で2022年10月1日に設立。先端技術による新しい映像制作技術の研究に取り組み、国内最大級のLEDスタジオが本格的な始動に向けてさまざまな実証実験を進めている。