熱検証のすべて - THIRDWAVE Pro WORKSTATION 新製品開発の舞台 -
THIRDWAVE Pro WORKSTATIONの新製品開発に密着し、その裏側をご紹介します。
高性能機器であるワークステーションの新製品開発は、一朝一夕にとはいきません。パフォーマンスや安定性、さらには製品の寿命までをも左右する重要な要素の一つに「熱検証」があります。
ここでは、新製品開発における熱検証の重要性に焦点を当て、そのプロセスを解説します。
熱検証とは?
電子機器の製造工程において、その製品が適切な冷却を行い、結果として適切な性能を維持できるかを確認するための試験や検証のこと。
特にハイパフォーマンスを要求されるワークステーションは高負荷な処理を短時間で行うため、多くの電力を使用し、大量の熱を発生します。CPUやグラフィックボードが熱暴走を起こすと、処理速度が低下し、最悪の場合は故障の原因にもなります。
熱検証は、この発生する熱を効率的に冷却できることを証明し、製品の信頼性と安定性を確保するために、なくてはならないプロセスです。
試行錯誤を繰り返し、最も排熱性の高い構成へと導く
熱検証は、TDP(熱設計電力)※1 に基づき、設計上想定される最大放熱量のCPUを組み込んで行われます。
次にカスタマイズ部材(パーツ)の選定等を行います。筐体内部でマザーボードやグラフィックボード、電源などの配置・配線を確認しながら、どのようなエアーフロー構造が効率的な排熱が可能かを検証していきます。
こうした試行錯誤と検証を繰り返すことで、最も効率的に排熱処理が可能な構成が導き出されます。
おおよその部材の選定が終わると、次に恒温槽※2 を使用して製品を周囲の温度を一定以上の環境にさらします。
専用の検証ツールを使用して構成された部材の放熱量や高負荷の稼働に支障はないかなどを検証していきます。
当社はパーツのカスタマイズも豊富に取り揃えているため、多くのパターンを検証する必要があります。想定できるすべての検証を終えるには膨大な時間を要し、ときには数日にわたることもあります。
※1 TDPとは・・・・CPUをはじめとした半導体チップについて、設計上想定される最大放熱量のこと
※2 恒温槽とは・・・長時間にわたり内部の温度や湿度を一定に保つ制御を施した容器
「高信頼性」への飽くなき追求
熱検証の重要性について、今回の新製品の企画を担当した渋谷亮太にインタビューしました。
お客様の使用環境に統一性はない
ー 熱検証時には、どんなことを意識されますか。
渋谷:お客様が使用する環境に統一性はないため、検証機とはいえ実際に使用しているお客様を意識して検証を行っています。例えば、科学技術計算では3日間など長時間にわたって計算が行われるケースもあります。ワークステーションは、その他にも3DCADや映像・動画編集、AI/ディープランニング、ゲノム解析、流体解析など使用用途は数多あり、1日の中で数時間使用する場合もあれば、24時間365日稼働させる場合もあるなど条件は様々です。多様なケースを想定して、検証時間を調整しています。
熱検証は実施してみないと何が起こるかわからない
ー 大変なこと、苦労されることはありますか。
渋谷:弊社ではパーツのカスタマイズが豊富なため、検証パターンが多く膨大な時間を要することがあります。理論上は問題ないだろうと想定していたとしても、熱検証を実施してみないと何が起こるかわかりません。
膨大なパターンと時間を要しますが、この苦労を経ることでお客様に安心、安定したWSをご提供できることにつながるので、苦労はしますが妥協しない信念で臨んでいます。
問題は徹底的に原因を追究する
ー 新製品が基準値をクリアできなかった場合はどうなりますか。
渋谷:クリアできなかった場合は、原因の追究になります。クリアできないパターンは様々あるので、パーツ構成を変えてみたり、電源容量を大きくしてみたりなど試行錯誤と検証を繰り返し行っていきます。熱検証中に支障が出た場合は、原因追究の徹底を怠ることはありません。
動画で見る 熱検証のすべて
今回の取材を通して、ワークステーションの製品開発における熱検証の重要性を改めて認識することができました。
一見地味に捉えられがちな「熱検証」ですが、それはただ単に製品の品質を保つためだけではなく、お客様の業務に最大限貢献する製品を提供するための必須のプロセスと言えるでしょう。
惜しみない労力とかけた時間が、
たしかな信頼性を生む
THIRDWAVE Pro WORKSTATION X2614/X4620
Intel Xeon W-2223/ Intel Xeon Silver 4310 CPUと、NVIDIA T1000 4GBを標準搭載した、ハイパフォーマンスワークステーション製品。
AIや4K8Kの高解像度映像処理、研究開発、3DCADなど高負荷な作業を快適にこなし、幅広い分野でご活用いただけます。