CAE解析とは？種類やメリット・デメリット、活用例を解説

この記事では、CAE解析の概要から種類、メリット・デメリットまで解説します。

CAE解析の活用シーンや事例も合わせてお伝えします。

自社でCAE解析の導入を検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。

CAE解析とは？

CAE解析とは、製品の設計段階においてコンピュータを用いてさまざまなシミュレーション・解析を実施し、妥当性を検討するものです。

CAE解析のCAEは「Computer Aided Engineering」の略で「コンピュータ支援設計」を意味します。

CAE解析が普及する前は、製品の耐震性や耐熱性などを検証するために試作品を作る必要がありましたが、試作品の制作や試験の実施には、大きな手間とコストがかかる点が課題となっていました。

CAE解析を活用すれば、試作品を作らなくてもコンピュータ上で疑似的に再現した製品を用いて検証が行えます。

従来よりも設計プロセスの効率化・コスト削減を期待できることから、製造業だけでなく、飲食業や建築業など、幅広い業界で活用されています。

CAE解析の必要性

CAE解析は、製造業をはじめとしたさまざまな業界でDX化が進んでいることから、その必要性が高まっています。

加えて、消費者ニーズが多様化している現代において、メーカーには競合優位性を築くためのこれまで以上の効率的な製品開発が求められています。

CAE解析を活用すれば、試作品を制作しなくてもコンピュータ上で幅広い検証を行えるため、従来よりも効率的な開発と品質管理の実現が可能です。

また、CAE解析の必要性が高まることで、CAE解析エンジニアの需要も高まっています。

CAE解析エンジニアに求められるスキルは後ほど解説するので、自社にCAEを扱える人材がいない場合は、ぜひ参考にしてください。

CAE解析の種類

CAE解析で実施できる解析には、さまざまな種類があります。

それぞれの具体的な特徴を解説するので、自社で採用できないか検討してみてください。

構造解析

構造解析は、製品の形状や材質に基づいて、強度や変形などの性質を数値的に解析する手法です。

構造解析では、力を加えた時の変形度や応力などを解析します。

構造解析を用いて製品の特定の条件下における状態を評価することで、製品設計を最適化できます。

また、構造解析では「ゴム製」や「金属製」といった素材ごとの解析も可能です。

素材ごとの試作品の作成が不要なので、解析にかかるコストと時間を削減できます。

振動解析

振動解析は、製品が振動にさらされた場合の反応を解析する手法です。

振動解析を行うことで、製品が振動や衝撃にどの程度耐えられるか、振動が製品の性能にどのように影響を与えるかを解析できます。

たとえば、常に振動や衝撃が加わる自動車などの設計に用いられています。

熱伝導解析

熱伝導解析は、特定の条件下における製品への熱の流入・流出、製品内部の温度分布などを解析する手法です。

製品への熱伝導や熱応力が性能・寿命にどのような影響を与えるかを把握できます。

具体的には、自動車用のエンジンやボトルなど、熱が発生する製品の開発段階で行われる解析です。

流体解析

流体解析は、流体（液体や気体）の流れや動きを可視化し解析する手法です。

たとえば、開発段階で飛行機の翼や自動車周りの空気の流れを把握することで、空気抵抗を受けづらい形状の翼・車体を開発でき、走行性能を保証できます。

そのほかにも、送風機やポンプ、エンジンなど、幅広い工業製品の性能を保証するために実施されています。

磁場解析

磁場解析は、電流などの外的要因によって発生する磁場が製品に与える影響を解析する手法です。

発電機や電気モーター、変圧器などの設計や、機器がほかの機器の近くでも正常に稼働するか確認するために用いられています。

磁場解析を行うことで、予期せず発生した磁場による性能低下を未然に防げます。

音響解析

音響解析は、製品が生成した音波がどのような影響を周囲に与えるかを解析する手法です。

音声解析では、構造物の反射を踏まえたうえでの音波の波及や吸収を予測できるため、劇場やコンサートホールの音響設計、スピーカーの性能向上、自動車や飛行機の騒音制御など、さまざまな分野で活用されています。

機構解析

機構解析は、機械システムの動作や機構を解析するための手法です。

機構解析では、複数の部品で構成された製品に対して荷重や強制運動を入力し、部品間の相互作用や正常に稼働するかを確認します。

自動車や産業機械、ロボットなど幅広い分野で活用されている解析手法です。

CAE解析の活用シーン

CAE解析の活用シーンは多岐にわたり、現在もさまざまな業界で活用されています。

たとえば、自動車産業では、試作機の一台当たりの作成コストが大きいことから、業務効率化だけでなく、コスト削減の観点から、CAEを活用してコンピュータ上での振動解析や流体解析が行われています。

また、近年は自動車の電動化が求められているため、自動車メーカーでは電気と機械が相互に及ぼす伝熱や構造の影響を考慮した解析が行われています。

具体的には、電動車両のリチウムイオンバッテリーが過度に熱を帯びると走行機能が低下してしまうため、CAEを用いた熱伝導解析を行い、部品の配置や冷却システムの設計を最適化しています。

さらに、食品業界では、飲料メーカーがCAEを活用してアルコールの動きを解析し、ユーザーが香りを感じやすいグラスを開発しました。

缶で提供する飲料商品でも、加熱殺菌に最適な条件を検証するためにCAEが活用されており、特定の条件下における殺菌速度を解析することで、殺菌効果を十分に保ちつつ、缶の中身の風味が損なわれない温度を見極めています。

CAE解析を活用するメリット

CAE解析を活用するメリットを解説します。

CAE解析の活用を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

開発時間の短縮

CAE解析を活用すれば、開発時間の大幅な短縮を実現できます。

従来は、製品の検証に試作品を使用していましたが、試作品の製作には、仕様書の作成や試作品の設計などの時間がかかります。

CAE解析は、コンピュータ上でさまざまな解析を行えるため、試作品を製作する必要がなく、従来の方法でかかっていた時間を削減できます。

また、開発時間を短縮することで、市場へいち早く投入できるため、競合優位性の獲得にもつながります。

高精度な解析作業

CAE解析では、従来の試作品を活用した解析方法では測定できない細かい情報や複雑な事象を高い精度で解析できます。

たとえば、前述したアルコールの動きや殺菌速度を人間が目視で確認することはできませんが、CAEを活用することで、数値や色などに可視化できます。

製品に対して高精度な解析を行うことで、よりユーザービリティに優れた製品の開発や品質保証の実現が可能です。

幅広いシミュレーションの実施

CAE解析を活用すれば、現実世界では再現が困難なシミュレーションにおける解析・検証を実現できます。

たとえば、高温や高圧などの極端な環境下での試験を行う場合、環境を整えるのに多くの時間とコストがかかりますが、CAEであれば、コンピュータ上で直ちに再現できます。

このように、CAEを活用することで従来の方法よりも幅広いシミュレーションが実施でき、製品の性能向上や新製品の開発に役立てられます。

環境保全への貢献

CAE解析は、環境保全にも貢献します。

従来のように試作品を用いて解析・検証を行う場合、使用した試作品は製品にはならず廃棄処分しなければなりません。

CAEを活用すれば試作品を作らないで済むため、原材料の消費を抑え、製造過程でのCO₂排出量も削減できます。

また、製品のエネルギー効率を改善するための設計も可能であるため、製品自体の環境負荷の低減も狙えます。

CAE解析を活用するデメリット

CAE解析にはさまざまなメリットがある一方で、デメリットも存在します。

CAE解析の導入を考えている方は、デメリットも把握したうえで検討してみてください。

CAEソフトのライセンス費用がかかる

CAE解析を行うには、専用のCAEソフトの導入が必要です。

CAE解析ソフトは、高度な計算・解析能力を持っているためライセンス費用が高く、企業によっては負担に感じる場合があります。

たとえば、Fusion 360（外部サイト）のライセンス費用は、8,800円/月または71,500円/年です。

とはいえ、CAEソフトを活用することで、これまでかかっていた試作品の製造費用が削減され、より高度な解析を行えるメリットを享受できます。

CAEの活用を検討している企業は、コストパフォーマンスを鑑みたうえでの検討をおすすめします。

CAEソフト以外にハードウェアの準備も必要

また、CAEを活用するためには、ソフトだけでなく、そのソフトの推奨スペックを満たすハードウェアが必要です。

Fusion 360（外部サイト）の動作環境は、以下のとおりです。

上記のスペックを満たすPCには、以下があります。購入の参考にしてください。

THIRDWAVE Pro TP5070 Windows 10 搭載

THIRDWAVE Pro SP5070は、コンパクトながら性能を備えたスリム型PCです。限られたスペースでの使用を考慮し、そのサイズでありながらメモリ8GB、ストレージ500GBを搭載。Fusion 360の要件をしっかり満たし、タワー型のTHIRDWAVE Pro TP7670に比べコストパフォーマンスに優れています。

Fusion 360専用としての利用を考えている方に最適です。

THIRDWAVE Pro MP5770

THIRDWAVE Pro MP5770は、Fusion360向けとして、おすすめできるデスクトップパソコンです。

CPUにCore i5-13400、GPUにはGeForce RTX 4070を搭載。8GBメモリと500GB NVMe SSDも備えるコンパクトながら拡張性の高いPCで、光学ドライブや2スロットのグラフィックボードにも対応。背面の空気の流れと120mmファンで冷却性能も抜群です。

2営業日で出荷できる短納期モデルで、3年保証が標準付帯されています。

専門知識を持った人材の確保が必要

CAE解析を適切に行うためには、専門的な知識と技術を持った人材が必要です。

CAEソフトの操作技術だけでなく、解析結果の正確な解釈には、材料力学や構造力学などの深い知識も求められます。

そのため、CAEの活用を考えている企業には、専門的なスキルを持ったCAE解析エンジニアの採用または育成をおすすめします。

ただし、人材確保には時間とコストがかかるため、自社のリソースを考慮したうえで検討してください。

CAE解析エンジニアに求められるスキル

CAE解析エンジニアに求められるスキルを解説します。

自社でCAE解析エンジニアの育成や採用を検討している企業は、ぜひ参考にしてください。

材料力学の知識

CAE解析エンジニアになるには、大学卒業レベルの材料力学の知識が必要です。

材料力学の知識を身に着けることで、物体に負荷がかかった時の応力や形状の変化をより正確に把握できます。

また、材料力学だけでなく、機械工学や物理学などの知識をあわせて身に着けておくことで、幅広い解析手法を活用できます。

CAE解析手法の知識

CAE解析の手法には、構造解析や流体解析、熱伝導解析、音響解析などのさまざまな手法があります。

CAE解析エンジニアには、これらの解析手法の原理を理解し、製品や状況に応じて適切な解析手法を選択し適用する能力が必要です。

CAE解析ソフトの活用技術

CAE解析エンジニアには、CAE解析手法の知識だけでなく、CAE解析ソフトを操作し、最適な解析結果を得るための技術が求められます。

ソフトの設定やモデリング、解析設定の調整、結果の解釈といった一連のプロセスを理解し適用する能力は、効果的なCAE解析を行ううえで不可欠です。

また、新しいバージョンのソフトや新しい機能に対応するために、常に最新の知識を習得する意識も必要です。

計算力学技術者資格認定合格レベルの技術

計算力学技術者資格認定（外部サイト）とは、解析品質の保証、製品の開発効率・性能・安全性の向上を実現するための技術レベルを評価する認定資格です。

資格を取得することでエンジニアとしての専門性や能力が評価されます。

計算力学技術者資格認定は、初級・2級・1級・上級アナリストの4つの階級に分かれているので、初めての方は初級から受験しましょう。

初級は、公認CAE技能講習会→認定審査申請→認定審査→認定証発行の流れで行われます。

詳しくは、計算力学技術者資格認定事業委員会のホームページ（外部サイト））をご確認ください。

まとめ

この記事では、CAE解析の概要から解析手法の種類、メリット・デメリットまで解説しました。

CAE解析は、コンピュータ上でさまざまなシミュレーションを再現し解析を実施できるため、従来の試作品を用いた解析よりも、設計プロセスの効率化やコスト削減を実現できます。

ただし、CAE解析を効果的に活用するためには、最適な解析手法を見極め、CAE解析ソフトを用いて実行できる人材が必要です。

CAE解析の活用を考えている企業は、この記事で解説したCAE解析エンジニアに求められるスキルを参考に、人材の育成・採用を検討してみてください。

人材の確保には時間とコストがかかるので、コストパフォーマンスを見極めたうえでの早めの取り組みをおすすめします。