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CADのサーフェスモデリングとは?基本機能やメリットを徹底解説
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CADにおけるサーフェスは、立体の外形を「面」で表現するモデリング手法です。ソリッドモデリングのように内部を持つ立体ではなく、曲面を組み合わせて形を作るため、複雑な自由曲面や意匠的なデザインを効率的に表現できます。
自動車や家電などの工業デザインなど幅広い分野で活用されており、現場での設計力を高めるためには欠かせません。
本記事では、サーフェスの基礎から代表的な機能、活用するメリットなどを解説します。初心者・経験者問わず、役立つ実践的な内容をまとめたので、参考にしてください。
目次
目次
サーフェスとは?CADにおける基本概念
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サーフェスとは、物体の形状を「面」で表現するモデリング手法です。ソリッドモデリングが体積を持つ立体を扱うのに対し、サーフェスは厚みのないシート状の要素を組み合わせて形を作ります。そのため、中身の詰まったブロック形状よりも、自由度の高い曲面や滑らかなデザインを柔軟に表現できる点が特徴です。
CADにおけるサーフェスは、自動車のボディや航空機の外板、家電製品の外装など、外観の美しさや空力特性を重視する設計分野で広く活用されています。また、複雑な曲面を定義できるため、ソリッドモデリングでは再現が難しい形状を補完する役割も持ちます。
設計現場では「ソリッド=構造設計」「サーフェス=意匠設計」と分けられることもあり、両者を適切に使い分けることで効率的かつ高品質な設計が可能です。
サーフェスモデリングの基本機能
サーフェスモデリングには、曲面設計を効率化するための機能が幅広く用意されています。それぞれの特性を理解し、設計の目的に合わせて使い分けることで、複雑な自由曲面も正確に再現できます。
具体的には、以下の機能があります。
サーフェスモデリングの機能
ここでは主な機能を取り上げ、どのような場面で活用できるのかを紹介します。
ロフト
ロフトは、複数の断面形状を滑らかに結び、滑らかな曲面を生成する機能です。断面を順に補間して面を作るため、自然な流れを持つ連続的な形状を再現できます。自動車のボディや家電の外装など、意匠性を重視する設計で多く利用されます。
断面の数や配置を工夫すれば、ふくらみやねじれなどの形状変化も柔軟に調整可能です。さらに、ガイドカーブを設定すれば、曲面の方向や連続性を細かく制御できます。デザイン性と精度の両立を図る際に、必要な基本機能といえるでしょう。
スイープ
スイープは、指定した断面を軌道となるカーブに沿って移動させ、曲面を作る機能です。ホースやパイプ、ワイヤーなどの形状を再現する際に適しており、構造設計にも応用されています。
軌道の形状を工夫すれば、ねじれや湾曲を持つ自由度の高いデザインも表現できます。また、断面を移動中に変化させることで、テーパーや厚みを持つ複雑な形状の作成も可能です。複数のガイドを組み合わせれば、自然で滑らかな面の流れを再現できます。意匠設計や流線形デザインなど、美しさと機能性を両立する設計に適した機能です。
回転(リボルブ)
回転(リボルブ)は、断面形状を軸の周囲に回転させて曲面を生成する機能です。円筒、球面、ボトルなどの回転対称形状を作る際に適しています。回転角度を調整すれば、部分的に開いた形状や非対称な造形も作成できます。
さらに、サーフェスとして生成すれば、細部の修正や意匠上の調整も行いやすくなるでしょう。リボルブは、単純な立体の作成から複雑なデザインのベース構築まで幅広く利用されています。軸の位置や角度を工夫することで、設計意図に沿った造形表現が可能です。
押し出し
押し出しは、断面形状を直線方向に延ばして面を作る基本的なサーフェス機能です。平面や緩やかな曲面を素早く構築でき、ベース形状の作成に適しています。方向と距離を指定するだけで安定した面を生成でき、ほかのモデリング機能とも相性がよいのが特徴です。
例えば、押し出した面をトリムやフィレットで加工すれば、意匠性の高い形状を効率的に整えられます。押し出しサーフェスは、初期段階の形状検討や寸法調整にも向いています。モデリングの基礎として、最初に習得しておきたい機能です。
パッチ
パッチは、隙間や穴のある部分に新しい面を生成し、形状を補うための機能です。複数のサーフェス間にできた空間を埋めることで、滑らかで一体感のある形状を再現します。境界線を指定して面を張る仕組みのため、欠損部の修正や補修に適しています。
設計途中で発生した隙間の補完にも有効で、仕上げ工程で使用されることが多いです。パッチを活用すれば、形状全体の連続性や外観品質を高められます。特に意匠設計や試作段階では、細部の整合性を保つために欠かせない操作です。
トリム/分割
トリム・分割は、不要な部分を切り取ったり、形状を分けたりするための編集機能です。既存のサーフェスを基準面やスケッチ線で切断し、必要な範囲だけを残せます。トリムは削除を目的とした操作に使われ、分割は複数の面へ再構成する際に用いられます。
これらを組み合わせることで、細部の形状調整や複雑な曲面の一部修正が可能です。精度の高いモデリングを行う上で、トリム処理は欠かせません。意図しないギャップを防ぐには、切断対象や境界条件を正確に設定しましょう。
フィレット/ブレンド
フィレット・ブレンドは、サーフェス同士の境界を滑らかにつなぐための機能です。角ばったエッジを丸めたり、異なる面を自然に接続したりする場面で使われます。
フィレットは一定の半径で丸みを加える処理に適しており、製品の安全性や外観の一体感を高めます。一方で、ブレンドは、異なる形状の間をなだらかに補間し、連続性のある曲面を作り出す際に用いられることが多いです。
これらを組み合わせることで、意匠面の完成度を高めるだけでなく、空力性能や構造強度の向上にもつながります。特に自動車や航空機など、美観と機能を両立させる設計では欠かせない工程です。
オフセット
オフセットは、既存のサーフェスから一定の距離を離して新しい面を生成する機能です。形状を維持したまま厚みを加えたり、部品間のクリアランスを確保したりする場面で使われます。距離を正確に設定することで、設計段階での干渉や隙間を事前に調整できます。
モールド設計や金型設計など、寸法精度が求められる工程でも効果的です。サーフェスの外側・内側どちらにも生成でき、設計目的に応じた柔軟な対応が可能です。元の形状との整合性を保ちながら、立体的な厚みを効率よく付与できる実用的な機能といえるでしょう。
縫合(ステッチ)
縫合(ステッチ)は、複数のサーフェスを結合して一体化するための機能です。隣接する面同士の境界をつなぎ、連続した閉じた形状を形成します。個別に作成したサーフェスをステッチすることで、ソリッド化の準備が整います。
縫合精度を適切に設定すれば、微小な隙間や重なりを自動的に補正可能です。複雑なモデリングでは、部分的に作成した面を最終的にまとめる工程が欠かせません。ステッチはその仕上げ段階を支える機能であり、モデル全体の完成度を左右する要素です。
サーフェスモデリングのメリット6選
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サーフェスモデリングは、複雑な曲面設計や意匠性の高い形状を正確に再現できる設計手法です。ソリッドモデリングと組み合わせることで、工業デザインから構造設計まで幅広い分野に応用されています。
ここでは、設計現場でサーフェスを用いる主なメリットを6項目に整理し、効果的な使い方と実務的なメリットを解説します。
複雑な曲面や意匠デザインを実現できる
サーフェスモデリングの特徴は、自由曲面を高精度に表現できる点です。ソリッドでは困難な滑らかな造形や、流線的なフォルムを効率よく設計できます。
自動車のボディや家電の外装など、外観品質やデザイン性を重視する製品で効果を発揮します。曲率の連続性を維持したまま形状を微調整できるため、意匠設計と機能設計の両立にも役立つでしょう。
ソリッドでは対応できない形状を補完できる
サーフェスは、ソリッドモデリングでは扱いにくい薄肉形状や中空構造の設計に適しています。厚みを持たないため、微細な凹凸や滑らかな面構成を柔軟に作り込めます。
構造設計では、ソリッドで全体を構築し、意匠部をサーフェスで補う使い分けが効果的です。この分担をすることで、設計効率と形状精度を両立しながら、完成度の高いデザインを実現できます。
軽量データで設計できる
サーフェスモデルは体積情報を持たないため、データ容量が小さく処理が軽い点もメリットです。複雑なモデルでも動作が安定しやすく、大規模なアセンブリ設計でも負荷を抑えられます。
また、軽量なモデルは表示処理が高速で、GPUやVRAMの使用量を低減できます。ノートPCや中性能のワークステーション環境でも、快適にモデリングを進められるでしょう。
部分的な修正や追加がしやすい
サーフェスは面単位で編集できるため、部分的な変更や再構築がしやすい構造です。そのため、意匠変更や設計変更が頻発するプロジェクトでも、短時間で対応できます。
ロフトやトリムなどの局所操作を使えば、既存形状への自然な修正も行えます。全体再計算が発生しにくいため、改良設計を効率よく進められるのが強みです。
解析や評価に強い
サーフェスは形状解析や可視化評価に向いており、反射・光沢・曲率の確認を高精度で行えます。意匠面では、面の連続性やハイライトの流れを確認しながら調整できる点もメリットといえるでしょう。
また、CAEやCFD解析の前処理段階でも、滑らかな形状データを準備しやすい形式です。品質確認や試作前検証の精度を高める上で、サーフェスモデルは有効です。
他CADとのデータ互換性に優れる場合がある
サーフェスデータは、STEPやIGESなどの中間フォーマットを介して他CADと共有しやすい特徴があります。体積情報を持たないため、形状破損のリスクが低く、データ連携にも適しています。
ただし、出力時のトリムや面精度の設定によって再現度が変化します。他CADでの正確な再現を目指す場合は、縫合精度やトレランス値の管理を徹底しましょう。
サーフェスモデリングの失敗例と解決策
サーフェスモデリングは自由度が高い反面、操作や設定を誤ると形状の破綻や不具合が生じることがあります。特に、縫合エラーやトリム不良などは設計後工程にも影響しやすく、注意が必要です。
ここでは、現場でよく発生する失敗例とその解決策を整理し、安定したモデリングを行うためのポイントを解説します。
縫合エラーやギャップの発生
縫合エラーは、サーフェス同士の境界が正しく一致せず、隙間や不連続が生じる現象です。主な原因は、境界エッジ間の距離やトレランス値の不一致にあります。
そのため、縫合前に各サーフェスの端点を確認し、連続性(G1/G2)の整合を取りましょう。縫合設定の許容誤差を適正値に調整し、微小ギャップを防ぐことで精度を維持できます。
縫合エラーを放置すると、ソリッド化やデータ出力時に不具合を引き起こすため、早期修正が求められます。
トリムやフィレットの不具合
サーフェスを切断または面取りする際、処理が正しく適用されず形状が欠落または破損する場合があります。主な原因は、交差条件の不整合や曲率の乱れ、面の連続性不足です。
そのため、トリムを実行する前に、交差線の整合を可視化ツールで確認しましょう。フィレットを適用する際は、半径が大きすぎると破損を招くため、値を段階的に調整して滑らかに接続します。
一方、複雑な曲面では、一括処理ではなく部分ごとに分けて作業することで、安定した結果を得られます。
出力時のデータ破損・変換エラー
異なるCAD形式へ出力する際、サーフェスが欠落したり不整合が発生したりすることがあります。原因は、ソフトウェア間でのトレランス設定や面精度の扱いの差にあります。
出力前には、縫合状態を確認し、トポロジーを整理して接続情報を統一しましょう。また、STEPやIGESなど各フォーマットの精度設定と単位指定を見直すことも重要です。
変換時に法線方向が反転する場合もあるため、出力後の可視確認を実施しましょう。
PCスペック不足による動作遅延
高精度な曲面や大規模データを扱う際、PC性能が不足して動作が遅くなることがあります。特にGPU性能やVRAM容量が不足すると、モデル表示や回転操作に負荷が集中します。
対策として、軽量表示モードを有効化し、不要なサーフェスを非表示にしましょう。さらに、グラフィック設定を最適化し、仮想メモリやキャッシュ領域を確保することで安定性を高められます。
快適な設計環境を維持するには、推奨スペック以上のワークステーションを用いるのが望ましいです。
品質確認不足による後工程への影響
設計者がサーフェス品質の確認を怠ると、量産や解析の工程で形状不整合が発生することがあります。微小なギャップや法線の乱れは、CAMやCAEで正確に処理できず再作業の原因になります。
形状完成後は、曲率・法線方向・厚みの連続性を確認しましょう。また、解析ツールを使って数値的に品質を評価すれば、外観では見えない問題も早期に特定できます。
品質確認を工程内の作業として定着させることで、設計全体の品質を安定的に維持できます。
サーフェスモデリングを始める手順
サーフェスモデリングを活用するためには、環境と基礎知識を整えることが欠かせません。自分の用途に適したCADソフトを選び、学習に必要な理論や操作方法を習得しましょう。
また、PCのスペックや周辺環境を整え、プロジェクトの要件に応じた設計方針を立てることが大切です。
ここでは、実務に取り組む前に必要となる準備の流れをまとめました。
必要なCADソフトを選ぶ
まずは、サーフェスモデリングに対応したCADソフトを選定します。代表例を挙げると、以下のとおりです。
サーフェスモデリングに対応したCADソフトの例
- SolidWorks
- CATIA
- NX
- Rhinoceros
- Fusion 360
ソフトによってサーフェス機能の得意分野や精度管理の仕組みが異なるため、設計目的に合わせて選ぶことが大切です。意匠設計を重視する場合は造形機能の豊富なツールを、構造設計と併用する場合はソリッド統合型のソフトを選ぶと効率的です。
また導入時には、ライセンス形態やファイル互換性を確認しておくと安心です。
学習に役立つ基本知識を身に付ける
CADの基本操作に加えて、サーフェス特有の概念も理解しておきましょう。中でも、以下の基礎用語は押さえておくとスムーズです。
- 連続性(G0~G3)
- トリム
- 縫合
- ガイドカーブ
公式チュートリアルやメーカーの学習サイトを活用すれば、操作手順と理論を効率的に習得できます。
また、実際の設計事例や動画教材を参考にすることで、理論だけでなく応用的な使い方も学べるでしょう。基礎知識を段階的に身に付けることで、トラブルを防ぎながらスムーズに設計へ移行できます。
作業操作環境を整える
サーフェスモデリングは処理負荷が高いため、安定した作業環境が欠かせません。推奨スペック以上のCPU、十分なVRAMを備えたGPU、高速ストレージを用意しましょう。
ソフトごとのグラフィック設定を最適化し、軽量表示モードを活用することで操作が快適になります。テンプレートやショートカットを自分の作業スタイルに合わせて設定しておくと、効率も上がります。
快適な環境は作業の正確性にも直結するため、初期設定の段階で丁寧に整えることが大切です。
プロジェクトに合わせて設計をする
サーフェス設計を実務に取り入れる際は、目的と最終出力に合わせた構成を意識します。意匠を重視する場合は滑らかな自由曲面を、構造部品との整合が必要な場合はソリッドとの融合を重視します。
初期段階ではサーフェスで大まかな形状を構築し、後からソリッド化して詳細設計へ移行する流れが一般的です。チーム設計ではデータ共有を前提に、縫合精度やトレランス設定を統一しておくとトラブルを防げます。
プロジェクト要件に即した設計プロセスを確立することで、効率と品質の両立が可能です。
BTO PCなら業務に合わせたスペック選び、柔軟なパーツ構成が可能
BTOパソコンは、用途に応じてCPU・GPU・メモリなどを自由に選択できます。設計内容や使用ソフトの特性に合わせて最適な構成を組めるため、無駄のない性能投資が可能です。
例えば、2D設計中心ならCPUとメモリ重視、3D設計中心ならGPUとSSD重視の構成が効率的です。さらに、デスクトップ型PC/ワークステーションなら後からパーツを交換・増設できるため、業務内容の変化にも柔軟に対応できます。
長期的に快適な環境を維持したい場合は、BTO PCの導入を検討しましょう。
まとめ
サーフェスモデリングは、複雑な曲面設計や意匠的なデザインを可能にし、ソリッドだけでは対応が難しい場面で活躍します。
基本機能を理解して正しく使えば、設計の自由度を高めながら効率的に形状を作成できますが、縫合エラーや動作遅延などの失敗を防ぐ工夫も必要です。導入時には、CADソフトの選定や操作環境の整備などを意識することで、実務で安定した成果を得られるでしょう。
サーフェスモデリングを本格的に活用するためにワークステーションの導入やスペック選びで不安がある場合は、サードウェーブへご相談ください。用途やソフト特性に合わせた最適な構成の提案や、環境構築に関するアドバイスをご提供します。















