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CADソフト一覧と選び方|2D・3D・建築・無料ソフトを比較
目次
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CADソフトとは?基本知識と種類
CADは、図面作成や形状設計、数量拾い、干渉チェックなどの設計業務をコンピュータで支援するソフトウェアです。手描きの置き換えにとどまらず、3Dモデルを基軸に見積もり・製造・施工・維持管理まで情報をつなぐ「設計基盤」として活用が広がっています。
ここでは、CADの役割と2D/3Dの違い、そして業界別の主な利用分野を整理します。
CADソフトの定義と役割
CADは、設計者の意図(寸法・公差・形状・注記・属性)をデジタルで正確に表現し、組織内外での再利用・共有・検証を容易にするための設計支援ツールです。
主な役割
- 正確な図面・モデルの作成
- 変更管理(履歴・差分の可視化)
- 検証(干渉・強度・数量・工程連携)
- 出力と外部連携(PDF/IFC/STEP/DWGでの共有)
- 標準化(図枠・レイヤ・注記ルールの統一)
手戻りの削減、品質の均一化、見積もり精度の向上、そして部門・協力会社間のコミュニケーションの円滑化が期待できます。
「CADとは│基本知識・機能・導入するメリットをわかりやすく解説」では、CADについてより具体的に解説しています。こちらも合わせてご覧ください。
2D CADと3D CADの違い
2Dは平面作図に強く、既存の図面様式と相性がよい一方で、3Dは立体形状をパラメトリックに扱え、検証と前後工程連携に強いです。
| 観点 | 2D CAD | 3D CAD |
| 主目的 | 図面化・詳細作図・注記 | 形状設計・組立検証・属性一元化 |
| 成果物 | 平面/立面/断面図、詳細図、配線・配管図 | 3Dモデル、アセンブリ、レンダ、数量/属性付きBIM/CIM |
| 強い業務 | 設備・電気の配線図、施工図、現場の詳細図 | 機械設計、金型、意匠~実施設計、干渉/工程/数量 |
| 検証 | 寸法・クリアランスの目視中心 | 干渉・重量・重心・動作域、工程/コスト試算 |
| データ連携 | DWG/DXF、PDF、画像 | STEP/IGES、IFC、BOM/PLM/CAE/CAM |
| 教育/運用 | 立ち上がりが早く標準化しやすい | 立ち上がり負荷は高めだが再利用・自動化に強い |
実務は「2Dで指示・提出、3Dで検討・検証」を併用するハイブリッド運用が効率的でしょう。
「2DCADと3DCADの違いとは?メリット・デメリットと使い分けのポイントを解説」では、2DCADと3DCADの違いについてより具体的に知りたい方は、ぜひご覧ください。
業界別の利用分野
業界ごとに重心が異なります。
製造は3D+CAM/CAE、建築・土木はBIM/CIM、設備・電気は2D中心に3D干渉を併用します。
| 業界 | 主な用途/タスク | 代表的成果物 | よく使う形式・連携 |
| 製造(機械/治具/金型) | 3D設計、組立検証、試作~量産 | 3D/組立図、2D出図、加工データ | STEP/IGES、DWG/DXF、CAM/CAE/PLM |
| 建築(意匠/構造) | 意匠検討、BIM、数量・干渉・工程 | 図面一式、BIM、レンダ | IFC、RVT/DWG、工程・積算 |
| 土木(CIM) | 地形/構造物3D、数量・工程管理 | CIMモデル、施工計画、出来形 | IFC/LandXML、DWG、CIM |
| 設備・電気 | 配管/ダクト/配線、機器レイアウト | 系統図・接続図、施工図、BOM | DWG/DXF、IFC、CSV |
| インテリア/造形/展示 | 形状検討、可視化、プレゼン | 3Dプレゼン、意匠図面、レンダ | SKP/IFC/DWG、DCC |
| 教育/研究 | 基礎演習、自動化検証 | 学習用モデル/図面、スクリプト | 多様(OSS含む)、API |
成果物と連携先を先に確定し、それに合わせて2D/3Dの比率とツールを決めるのが最短ルートです。
AutoCAD
AutoCADは2D/3Dの両方に対応し、DWG/DXFを前提とした高い互換性と豊富なアドオンを備える汎用CADです。ユーザーコミュニティと教育資産が充実しており、組織内の標準化や社外とのデータ授受を安定して進めやすいのが特長です。
特徴
- 世界的普及、DWG/DXF互換、精密作図
- レイヤ・注記・尺度・外部参照など図面標準の運用が容易
- API/LISPでの拡張、マクロ/ツールチェーン整備
- PDF/IFC/STEPなどの入出力(要要件確認)
- ネットワーク/フローティングなど多様なライセンス形態
主な業種・用途
- 製造:量産図面、冶具・装置、治工具管理
- 建築:意匠・構造の2D出図、施工図
- 設備:電気:配線・配管・ダクト、系統図/接続図
- 土木:平面/縦横断図、数量拾いの前工程
運用では、既存DWGテンプレートやLISP資産の再現性を短期PoCで確認し、印刷スタイル・外部参照ルール・ライセンス配布/回収手順を標準化してから段階展開すると定着しやすいです。また、3DやBIMが主軸となる業務は専用ツールとの役割分担を設計しておくと、移行と教育の負荷を抑えられます。
IJCAD
IJCADはAutoCAD互換の操作体系とDWG互換を備え、導入・運用コストの最適化を図りやすい国産CADです。既存のテンプレートやLISP/スクリプト資産を生かしながら置き換えや増設を進めやすく、教育・運用面でも立ち上げを短期で行いやすい点が特長です。
特徴
- AutoCAD互換UI、主要コマンド・ショートカットの継承
- DWG/DXF互換、印刷スタイル・外部参照に対応
- LISP/スクリプト資産の再利用(要互換検証)
- 軽量動作、シンプルなアクティベーション
- サブスク/永続/ネットワーク等の柔軟なライセンス
主な業種・用途
- 建築・設備:意匠/構造/設備の2D作図、施工図
- 製造:量産図面、改版対応、外注とのDWG授受
- 教育:授業・実習、社内ビューア/簡易編集端末の拡充
運用では、代表図面でテンプレート・印刷スタイル・外部参照・マクロ類の再現性を短期PoCで確認し、配布/回収や端末入替のSOPを整備してから段階展開すると定着しやすいです。
BricsCAD
BricsCADはDWGネイティブを土台に、2Dから3D、さらにBIM/Civilモジュールまで同一UIで段階的に拡張できるプラットフォームです。2D標準化から始めて将来的に3DやBIM/CIMへ発展させたい組織に適しており、部署横断での共通運用を設計しやすいのが特長です。
特徴
- DWGネイティブ、2D/3D横断
- BIM/Civilモジュールで拡張(段階導入に向く)
- パラメトリック設計、AI系図面最適化
- 外部参照管理、シート/スタイル標準化
- IFC/STEPなどの入出力、API拡張、ネットワークライセンス
主な業種・用途
- 製造:2D標準から3D移行、組立・干渉の検討
- 建築:2D作図+BIM連携、数量・干渉チェック
- 土木:線形・地形モデル、数量・工程連動(Civil)
- 設備:2D作図とモデル併用、配管・ダクトの干渉確認
導入では、まず既存のDWG標準の再現性を短期PoCで検証し、必要領域からBIM/Civilモジュールを段階導入すると定着しやすいです。作業時間・互換性・品質をスコア化して意思決定に反映し、教育計画とライセンス運用をあらかじめSOP化しておくと、展開後の運用が安定するでしょう。
ZWCAD
ZWCADは軽快な動作と高いDWG互換性を備え、コストパフォーマンスを重視して多数配布しやすい2D中心の汎用(はんよう)CADです。旧世代PCが混在する環境や、大量出図・改版が多い現場でも運用を立ち上げやすいのが特長です。
特徴
- 軽量・高速な起動/保存、動作安定性
- DWG/DXF互換、印刷スタイル・外部参照の再現性
- 基本作図/注記/レイヤ管理の充実、ブロック運用
- LISP/マクロ対応(互換は要テスト)
- サブスク/永続など柔軟なライセンス(最新条件は要確認)
主な業種・用途
- 建築・製造・インフラの2D作図、施工図・詳細図
- 改版作業や大量出図が発生する量産現場
- 旧スペック端末を含む広範な配備、コスト最適化
導入時は代表図面で作図・出図・外部参照・印刷スタイルの再現性を短期PoCで確認し、アクティベーションや配布/回収のSOPを整えてから段階展開すると定着しやすいでしょう。
Jw_cad
Jw_cadは無料で利用できる国産の2D CADで、軽快な動作とシンプルな操作性により、住宅系を中心とした建築分野や教育用途で広く活用されています。初学者の立ち上がりが早く、小規模事務所や現場での簡易改版にも適しています。
特徴
- 無償提供、軽量・高速、学習コストが低い
- 2D作図の基礎機能(線・寸法・注記・レイヤ)
- 図面テンプレや部品のコミュニティ資産が豊富
- DXF/DWG入出力(互換は要検証)、PDF出力
- シンプルなUIで教育・講習に向く
主な業種・用途
- 建築・住宅の平面/立面/断面などの2D図面
- 教育・学習、社内の軽微な改版・検図
- 個人~小規模事務所の出図・確認用
組織導入では、図面標準と授受ルールを先に明文化し、外部協力先との受け渡しテストを行ってから展開すると品質と再現性を確保しやすいです。BIMや高度な3D連携が必要な場合は、役割分担を前提に他ツールとの併用体制を設計しておくと運用が安定するでしょう。
DRA-CAD
DRA-CADは建築分野、特に意匠・構造の図面作成に強みを持つ国産CADで、建築実務に必要な作図支援や図面管理機能が充実しています。建築特有の表現・注記・納まりを効率よく整えたい現場で導入しやすいのが特長です。
特徴
- 建築/構造向け作図支援(断面・矩計、通り芯・階高管理)
- 建築図面テンプレート、注記・部材表の自動生成
- 外部参照/シート/スタイル運用、印刷スタイル管理
- PDF/DWG入出力、IFC等の連携(要要件確認)
- 実務向けのコマンド体系と日本語ドキュメント
主な業種・用途
- 建築意匠・構造設計の図面一式(平面/立面/断面/詳細)
- 施工図・納まり検討、改修・改版対応
- 建築実務の標準化・省力化、レビュー/検図プロセスの効率化
導入時はBIM/IFCとの位置づけや外部協力先との授受仕様を先に定義し、図面標準・注記ルール・検図基準をテンプレート化して教育と併せて展開すると定着しやすいです。
RootPro CAD
RootPro CADは軽量で扱いやすい国産2D CADで、初学者から日常の作図まで素早く立ち上げられる点が特長です。教育用途や現場での軽微な改版、電気・設備系の指示図作成にも適しています。
特徴
- 軽量・シンプルUI、学習コスト低
- 基本作図・寸法・注記・レイヤ管理が充実
- DXF/DWG入出力(互換は要検証)、PDF出力
- マクロ/スクリプトでの半自動化余地
- 永続/サブスクなど柔軟な導入形態(最新条件は要確認)
主な業種・用途
- 電気・設備の2D図面、配線・系統の指示図
- 教育・研修、社内の軽微な改版・検図
- 事務/現場部門での簡易作図・共有
導入時は既存テンプレートや印刷スタイルの再現性を短期PoCで確認し、役割を「軽量作図・教育・改版」に明確化して標準運用へ落とし込むと、スムーズに定着しやすいです。
FreeCAD
FreeCADはオープンソースの3D CADで、パラメトリック設計と拡張モジュール(Workbench)により高い柔軟性を持ち、研究開発や試作、自動化の基盤として活用しやすいソフトです。社内ツールチェーンへの組み込みやスクリプトによる省力化にも向いています。
特徴
- パラメトリック3D、スケッチ/パート/アセンブリ機能
- Workbenchによる機能拡張、Pythonスクリプト対応
- STEP/IGES/DXFなどの入出力(要件検証)
- OSSゆえの高いカスタマイズ自由度
- コミュニティ中心のサポート(商用支援は別途手配)
主な業種・用途
- 製造・機械の試作設計、治具/ホルダー、形状検証
- 研究開発・教育、アルゴリズム/自動化の原型作り
- 内製ツールチェーンの検証、データ変換の中継
導入時はサポート体制やバージョン運用、最終納品形式(STEP/DWG/図面PDFなど)を先に定義し、評価用データで互換性と再現性を短期PoCで確認してから展開すると安定します。価格や機能の前提は都度更新されるため、社外授受の仕様や社内ルールと併せて運用に織り込むと安心です。
DraftSight
DraftSightは2D設計に特化したAutoCAD互換系のCADで、既存のDWG資産を生かしながら大量作図や改版業務を効率化しやすいソフトです。標準化された2Dフローの生産性向上を狙う現場で導入しやすいのが特長です。
特徴
- 2D作図特化、DWG/DXF互換が高い
- 印刷スタイル・レイアウト・外部参照の運用が安定
- ブロック/属性/テーブル機能、バッチ印刷・パブリッシュ
- API/マクロによる自動化(エディション依存)
- サブスク中心の提供、商用利用前提(最新条件は要確認)
主な業種・用途
- 製造:量産図面、定型部品図、改版の高速処理
- 建築:施工図・詳細図、協力会社とのDWG授受
- 教育/社内標準:テンプレート運用、チェック用ビューア環境
導入時は代表図面で注記・尺度・印刷スタイル・外部参照の再現性を短期PoCで確認し、ライセンス配布/回収やバージョン互換のSOPを整えてから段階展開すると定着しやすいです。
Vectorworks
VectorworksはBIM対応と高い表現力を両立し、意匠検討から図面化・数量連携・プレゼン制作までを一貫して進めやすい設計プラットフォームです。建築・内装・造園など多様な分野で、表現と実務のバランスを取りやすいのが特長です。
特徴
- 意匠表現力、レンダリング/プレゼン機能
- BIMワークフロー、IFC入出力、データタグ/属性管理
- 図面化(シート/ビューポート)と数量拾いの往復が容易
- スタイル/リソースの標準化、外部参照・図面管理
- プラグイン/リソース共有で拡張、ランドスケープ/舞台領域の強み
主な業種・用途
- 建築意匠:コンセプト~実施設計、図面・数量・レンダまで一貫
- 内装/展示/舞台:表現重視の提案、レイアウト/演出検討
- 造園/ランドスケープ:地形・植栽・動線計画、数量・図面化
- 教育/設計事務所:BIM提出と表現の両立、IFCベースの協業
導入時は、プレゼンとBIM提出の役割分担を先に定義し、テンプレート・スタイル・命名規則を整えてから段階展開すると定着しやすいです。BIM他ツールとのIFC整合や外部協力先との授受仕様も併せてPoCで検証しておくと、運用が安定します。
Revit
Revitは建築・構造・設備を単一のBIMモデルで統合管理でき、干渉・数量・工程といったモデルベースの実務を一貫して推進しやすいプラットフォームです。ファミリ運用とテンプレート設計により、図面・数量・属性情報の整合性を保ちながら生産性を高めやすいのが特長です。
特徴
- マルチディシプリン統合(建築/構造/設備)
- ファミリ運用、テンプレ/ビュー/シートの標準化
- 干渉チェック、数量拾い、明細・タグの自動化
- 3Dビュー/2D図面の連動、属性一元管理
- IFC入出力、Navis等との連携、ワークシェアリング
主な業種・用途
- 建築設計:意匠~実施、モデルベースの図面・数量連携
- 構造設計:部材配置・数量、干渉や納まりの事前検証
- 設備設計:配管/ダクト/配線のモデリング、系統・負荷計算連携
- 施工/コーディネーション:干渉調整、工程・出来形連動、施工図
導入時はBIM規約・LOD・ファミリ標準を先に策定し、テンプレートと命名規則、ビュー/シートの運用ルールを整えてから段階展開すると定着しやすいです。協力会社・他BIMとのIFC整合や、Navis等の調整フローも併せてPoCで検証しておくと、図面・数量・干渉の一貫性を高い水準で維持できます。
Fusion 360
Fusion 360はクラウドを基盤に、3D設計・CAM・CAE・レンダリングまでを一体で扱える統合型CADです。データ管理やバージョン履歴、共同編集が同プラットフォーム内で完結し、試作から量産前の検討までを短いリードタイムで回しやすいのが特長です。
特徴
- パラメトリック/ダイレクト/サーフェス/アセンブリを兼備
- CAM統合(2.5D~多軸、ポストプロセッサ運用)
- 解析(静解析/モーダル/熱ほか)とレンダリング連携
- クラウドによるデータ管理・履歴・ブランチ/マージ
- API/アドインでの自動化・拡張(スクリプト対応)
主な業種・用途
- 製造:試作設計、治具(冶具)、装置部品、量産前検討
- スタートアップ/個人:設計~加工までの短サイクル開発
- 教育:統合ワークフローの学習、設計から加工までの体験
導入では、クラウド運用ポリシーを先に整理し、代表案件でCAMポストや外注授受の再現性を短期PoCで確認すると定着しやすいです。アドイン構成と権限設計、ライセンス条件をSOPに落とし込み、試作~加工のボトルネックを定量化してから段階展開しましょう。
SketchUp
SketchUpは直感的な操作で素早く3D形状を作成でき、コンセプト検討からプレゼン制作、簡易な図面化まで軽快に進められるモデリングツールです。初学者の立ち上がりが早く、プラグインや素材ライブラリを活用した拡張もしやすいです。
特徴
- 直感操作のプッシュ/プル、ガイド・推論による素早いモデリング
- 充実した拡張エコシステム(拡張機能倉庫/プラグイン)
- マテリアル/スタイル/シーン管理、アニメーション出力
- LayOutによる図面化・注記・ペーパースペース
- 3D Warehouseの豊富なコンポーネント資産、レンダプラグイン連携
- IFC/DWG/SKPほかの入出力(エディション依存、要要件確認)
主な業種・用途
- 建築・内装:コンセプト検討、意匠検討、内装プレゼン、簡易図面化
- 造形/展示/プロダクト:形状検討、モックアップ、レンダリング出力
- 都市/ランドスケープ:ボリューム検討、街並み検討、日影・見え方確認
- 教育・個人:3D入門、短時間プロトタイピング、プレゼン資料作成
運用では、どこまでをSketchUpで作り、どこからBIM/製造系ツールへ受け渡すかの役割分担を明確にすると定着しやすいでしょう。表現と図面化を往復するワークフローをテンプレート化し、IFC/DWGなどの授受仕様を先に決めておくと、社内外の連携が円滑になります。
CADソフトを比較する観点
どのCADが最適かは、機能の豊富さだけでなく、価格・運用・互換・サポートなど複数の要素が組み合わさって決まります。情シス/調達としては、部門横断の要件を踏まえつつ、短期PoCで再現性を確かめ、総所有コストで意思決定することが重要です。
ここでは判断の軸となる代表的な観点を見ていきましょう。
機能性
最終成果物と前後工程に照らし、2D/3D/BIMの重心と必須機能の適合度を見極めましょう。
- 干渉・数量・工程連携、レンダリング、CAM/CAE/PLM、IFC対応、API/自動化の有無
- よく使う操作・テンプレート・図面規格の再現性
- 役割分担(どの機能をどのツールに任せるか)の整理
現場データで代表案件を検証すると判断がぶれず、導入後の実効性を確保できます。
価格・ライセンス形態
価格は変動しやすいため、最新条件を前提に複数の形態を比較しましょう。
- サブスク/永続/ネットワーク/フローティング/クラウドの選択肢
- 単価だけでなく教育・テンプレ整備・運用・ダウンタイム・互換対処を含むTCO
- 3~5年総額の試算と繁忙期の一時増枠など運用面の柔軟性
TCOで全体最適を図ると、初期費用に左右されない健全な意思決定ができます。
操作性と教育コスト
既存スキルや運用との親和性が立ち上がり速度を左右します。
- UI/コマンド体系・ショートカットの近さ
- 初級者の1日到達点、熟練者の工数短縮幅
- 社内教材・テンプレの流用可否、FAQ整備のしやすさ
定量評価で学習負荷を見積もると、展開スケジュールと人員計画が具体化します。
データ互換性・既存環境との相性
社外授受と社内システム連携の再現性を重視しましょう。
- DWG/DXF、STEP/IGES、IFC、RVT、Parasolid等の入出力品質
- 尺度・注記・印刷スタイル・外部参照の崩れの有無
- PDM/PLM、工程・積算、DMS、VDI/NAS、認証・権限との整合
崩れやすい箇所は運用ルールとテンプレで補強すると、トラブルを未然に防げます。
サポート体制・ユーザーコミュニティ
導入後に頼れる窓口とナレッジの厚みは定着率を左右します。
- 受付言語・時間、SLA、障害対応の初動速度
- アップデート頻度・互換ポリシー、長期サポートの有無
- 教育コンテンツ、ユーザー会・フォーラムの成熟度
PoC段階で伴走力を見極め、社内ヘルプ(FAQ、テンプレ更新、SOP)と併せて体制化すると安定運用につながるでしょう。
CADソフト導入に必要なPC環境
CADはCPUよりもGPU・メモリ・ストレージのバランス設計が成果物の軽快さを左右します。特に3DやBIM/CIM、レンダリングや大規模図面では、ボトルネックの見極めと余裕のある構成が定着の近道です。
ここでは優先度、用途別の目安、そしてワークステーション選びの勘所を探っていきましょう。
GPU・メモリ・ストレージの優先度
2D中心か3D/BIM中心かで投資の優先順位は変わります。基本は「表示=GPU」「同時に扱えるデータ量=メモリ」「読み書き=ストレージ」と捉えると判断しやすいです。
また、CPUは作図全般の応答性に寄与し、ネットワーク/保存先の設計は全体の体感速度を左右します。
| 資源 | 役割・影響 | 目安・要点 |
| GPU | 3D/BIM、4K以上や多画面での操作性を左右 | 認証ドライバ採用、VRAM重視(中~大規模は上位dGPU) |
| メモリ | 同時に扱える図面/モデル規模を規定 | 基準32GB、BIM/大規模は64GB以上を検討 |
| ストレージ | 読み書きの速さと安定性を左右 | NVMe SSD推奨、容量1TB以上+作業用/キャッシュ領域 |
| CPU | 作図や一部処理の応答性、解析/レンダの速度 | 高クロック重視、解析/レンダはコア数も効く |
| ネットワーク/保存先 | 共同作業や大容量データの体感に直結 | 10GbEや高速NAS、クラウド同期の設計最適化 |
最終的には自社の実データで遅延の原因を計測し、GPU・メモリ・IOのどこが律速かを短期PoCで見極めることが重要です。計測結果に基づいて優先投資先を決めると、無駄のない構成にできます。
用途別の推奨スペック
まず2D/3D/BIMの比率と、同時に扱うモデル規模(図面枚数・要素数・参照の深さ)を把握することが重要です。
下表はあくまで目安です。
| 用途/規模 | CPUの目安 | メモリの目安 | GPUの目安 | ストレージの目安 |
| 2D中心(一般事務機+CAD) | 中位クラス(高クロック) | 16GB | エントリーdGPU/内蔵でも可 | NVMe 512GB以上 |
| 3D機械(中規模アセンブリ) | 中~上位(高クロック/6–12C) | 32GB | ミドルクラスdGPU(認証推奨) | NVMe 1TB以上 |
| BIM/大規模モデル(建築/土木) | 上位(高クロック/8-16C) | 64GB以上 | ハイエンドdGPU(認証/VRAM重視) | NVMe 1TB以上+高速NAS |
| レンダ/解析も実施 | 上位(多コア/高クロック) | 64GB以上 | 上位dGPUまたは専用GPU | NVMe 1TB+作業用高速SSD |
上記の目安に対し、実データでFPS・操作遅延・保存/読み込み時間を測定し、ボトルネックを特定してから最終構成を決めると過不足を避けやすいです。
CADに適したワークステーションの選び方
単に高性能なパーツを集めるだけでは安定運用になりません。ドライバ/シャーシ/電源/保守まで含めた「装置」としての完成度が重要です。
- GPUの認証ドライバ有無と更新ポリシーを確認
- 冷却・静音設計、長時間負荷時のスロットリング耐性
- メモリ/ストレージの増設余地とRAID/バックアップ方針
- 電源容量と将来増設のヘッドルーム(GPU追加や大容量SSD)
- 10GbEやWi-Fi 6/7などネットワークI/Fの拡張性
- SSO/MFA、BitLocker/自動暗号化、DLPなどセキュリティ要件との整合
- 保守SLA(翌営業日/オンサイト)と代替機・貸出機の運用
最後に、代表プロジェクトを使った短期PoCで操作感と安定性を測り、調達仕様書には「測定値(目標)」と「増設前提」を明記しておくと、導入後のチューニングや拡張がスムーズになるでしょう。
CADソフトの導入手順
CADの入れ替えや新規導入は、ツール選定だけでなく運用・教育・データ互換・PC環境までを含む業務設計の見直しになります。
情シス/調達の視点では、部門横断の要件を短期間で整理し、代表案件を用いたPoCで「実務の再現性」を確認しながら、段階展開で定着させることが肝要です。
自社要件を整理する
導入の成否は「何を、どの品質で、誰に渡すか」を最初に定義できるかで決まります。成果物と前後工程、制約条件を言語化し、優先順位に合意してから候補選定に進めましょう。
| 観点 | 要点 |
| 目的・範囲 | 2D標準化/3D化/BIM要件対応、対象部門とスコープ |
| 成果物 | 提出フォーマット(DWG/IFC/STEP等)、図面規格、LOD、命名規則 |
| 連携 | PLM/ERP、工程・積算、施工管理、外注・協力会社の授受仕様 |
| 制約 | 情報区分・セキュリティ、クラウド運用ポリシー、納期・予算 |
| 現状資産 | テンプレ/LISP・マクロ、過去図面、端末・ネットワーク・保存先 |
| 体制 | 教育計画、ヘルプデスク、ロールと責任分界 |
要件は「理想」と「現実」のギャップを可視化して優先順位を付け、短期に達成する項目と中期に移管する項目に分けておくと、以後の判断がぶれません。
候補ソフトを抽出する
現行資産との親和性と、ロードマップ(2D→3D→BIM)への適合で候補を絞りましょう。3~4製品に集約し、試用に値する根拠を明確にします。
| 観点 | 要点 |
| 互換 | DWG/DXF、IFC、STEP/IGES、印刷スタイル・外部参照の再現性 |
| 機能 | 干渉/数量/工程、レンダ、CAM/CAE、API/自動化の有無 |
| 運用 | ライセンス形態(サブスク/永続/フローティング等)とTCO |
| サポート | 日本語窓口、SLA、アップデート方針、教育コンテンツ |
| 事例 | 同業・同規模の定着事例、コミュニティの厚み |
| 将来性 | モジュール拡張や周辺エコシステム、ロードマップ公開状況 |
一次選抜の段階で「何をその製品に任せ、何を他ツールで補完するか」を役割分担として記述しておくと、この後のPoC設計が明確になります。
トライアル/PoCで評価する
代表案件を縮小再現し、「実務の再現性」を数値と証跡で確認します。性能だけでなく、運用・教育・互換まで含めての測定です。
| 観点 | 要点 |
| 生産性 | 作業時間、操作遅延、保存/読み込み、出図スループット |
| 品質 | 注記・尺度・印刷スタイル・外部参照の再現、干渉/数量精度 |
| 互換 | DWG/IFC/STEPの往復、協力会社との授受テスト |
| 運用 | ライセンス配布/回収、権限・ログ、バックアップ/復旧 |
| 環境 | 端末スペック差の影響、ネットワーク/NAS/クラウド同期 |
| 教育 | 立ち上がり時間、テンプレ適用の容易さ、FAQ整備性 |
評価はスコアシート化し、動画・スクリーンショット・測定ログを残すと、定量+定性の両面で合否基準を満たした製品だけを最終選考に進められます。
最終選定と導入プロセス
PoCの結果をTCOとリスクで俯瞰し、役割分担を前提に最終構成を決めます。展開はパイロットから段階的に実施し、運用を定着させます。
| 観点 | 要点 |
| 意思決定 | TCO/ROI、リスク(人材・二重運用・互換)比較、採否判定 |
| 標準整備 | テンプレ・図面規格・命名規則、IFC/STEP/DWG授受仕様 |
| 体制整備 | 教育計画、ヘルプ窓口、SLA・エスカレーション |
| 配布設計 | ライセンス/端末入替SOP、イメージ配布、権限・監査 |
| ロールアウト | パイロット→横展開→定着レビュー→監査 |
| 条件管理 | 契約・更新条件(価格は変動あり)、アップデート方針 |
導入後はKPI(作業時間・エラー率・レビュー回数等)で効果を継続測定し、テンプレ更新と教育サイクルを回し続けることで、生産性を安定的に引き上げられるでしょう。
まとめ
CADソフトは用途や業務環境、前後工程との連携、社内の成熟度によって最適解が変わります。
まずは自社の成果物・提出仕様・連携要件を明確化し、候補を絞って短期PoCで「実務の再現性」を確認することが重要です。価格や機能は更新されやすいため、最新条件を前提にTCOで意思決定し、テンプレートや教育を含む運用設計まで一体で検討してください。ワークステーション構成や導入プロセスの設計に不安がある場合は、専門家の知見を活用するのが近道です。
Dospara plusでは、用途に応じたマシンスペック提案や検証支援の相談が可能です。過度な個別製品推しに偏らず、客観的な「選定観点の地図」を手元に、現場に最短距離でフィットする設計環境を整えていきましょう。















