不動産業界のAI活用事例9選！導入するメリット・デメリットも解説

この記事では、幅広い分野で活用されているAIの不動産業界での活用事例や、AIを導入するメリット・デメリットを解説します。

AIを活用する際のポイントもあわせてお伝えします。

自社でAIの導入を検討している方や、具体的な活用シーンを知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

不動産業界が抱えている問題をAIが解決

AIを活用すれば、不動産業界が抱えている少子高齢化や事務処理業務の問題などを解決できます。

具体的な活用シーンや課題を把握し、自社でAIを導入するイメージを明確にしてください。

不動産業界でのAIの活用シーン

AIは、すでにスポーツやエンタメ分野で活用されており、新たな観戦体験やゲーム体験を実現していますが、不動産業界においてもさまざまなシーンでの活用が期待されています。

物件提案

AIを活用すれば、顧客の要望や予算に沿った最適な物件の提案が可能です。

たとえば、物件の間取りや予算だけでなく、地域の特色や周辺施設の情報をAIに学習させ、顧客のヒアリング情報とかけあわせれば、潜在的な要望の把握につながります。

また、多くの物件を管理する不動産の場合、物件リストのなかから顧客に合わせて物件をピックアップするには時間と手間がかかります。

AIに物件のピックアップをサポートしてもらえれば、業務効率を高められるため、人手不足に悩んでいる不動産会社におすすめです。

アフターフォロー

AIは、不動産契約後のアフターフォローにも役立ちます。

たとえば、不動産入居後の設備不良トラブルが発生した場合、これまでは不動産会社の営業時間内にしか問い合わせができませんでした。

問い合わせに対する応答内容を学習したAIチャットボットや自動応対システムを導入すれば、24時間体制でのフォローが可能で、顧客満足度の向上につながります。

また、問い合わせ履歴をデータとして保存しAIで分析することで、営業体制の問題点が明確になり、サービスの向上にも活かせます。

不動産査定

不動産査定にもAIを活用できます。

データをもとに不動産価格を査定する「机上査定」であれば、AIに膨大な物件データと過去の取引実績を学習させることで、瞬時に最適な不動産価格を算出してくれます。

また、周辺環境や市場動向も学習させれば、より適切な査定が可能です。

不動産仲介

これまで人間が行っていた不動産仲介業務もAIに代行させられます。

AIを活用すれば、買主と売主のニーズと各物件の特徴を照らし合わせた最適なマッチングが可能です。

また、売買契約書の作成などの一部の事務的な作業もAIにサポートしてもらうことで、業務効率化とスムーズな顧客対応を実現できます。

顧客管理

AIを活用すれば、膨大な顧客情報の管理も自動化できます。

これまで人間が手作業で分類していた顧客情報も、AIを使うことで性別や年齢、契約年数、物件の特徴ごとに自動振り分けが可能です。

また、分類されたデータを分析すれば、今後のマーケティングや営業方針の決定にも役立てられます。

不動産業界の主な課題

不動産業界が抱えている主な課題を4つ解説します。

自社の状況と当てはまっているか気になる方や、不動産業界への参入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

少子高齢化

少子高齢化は、不動産業界にとって深刻な課題のひとつです。

人口減少に伴い、空き家は年々増加の一途をたどっており、不動産の需要低下が顕著にあらわれています。

一方で、高齢者向けの住宅の需要が高まるなど、市場のニーズも変わりつつあります。

不動産会社は、AIを活用した情報収集や分析を通じて将来的な需要を把握し、このような課題とニーズの変化への対応が重要です。

過去のデータの処理

不動産会社は、管理物件や顧客データだけでなく、地価や路線価、周辺施設など、さまざまなデータの管理・活用が必要です。

しかし、人間が処理するには膨大な時間とコストがかかり、全てのデータを余すことなく有効活用することは困難です。

AIであれば、人間では処理できないデータでも高速に処理でき、業務の効率化はもちろん、事業戦略の策定などのマーケティング活動や不動産査定などに有益な情報を抽出してくれます。

適切な値段設定

物件の家賃や不動産価格の査定などの値段設定は、契約結果を左右する繊細なものです。

これまでは人間が過去のデータや市場、ほかの物件の価格を加味して設定していましたが、手に余ってしまい十分な分析ができていないケースがほとんどです。

また、扱う物件が多いほど時間を取られてしまうため、業務効率化の観点からも課題のひとつとして捉えられていました。

AIに上記の膨大なデータを学習させれば、市場動向を加味したその時点での最適な価格を提案してくれます。

マッチングの効率化

物件への入居を検討している顧客は、Webサイトや不動産会社の実店舗を利用して自身の希望する間取りや家賃から物件を検索しますが、条件に合った物件が膨大な場合、マッチングに時間がかかるのが課題でした。

AIに顧客の要望や予算、趣味嗜好、生活スタイルなどを学習させれば、瞬時に最適な物件を提案してくれます。

また、顧客が気づいていない潜在ニーズにもとづいた提案もしてくれるため、AIの活用は、顧客満足度の向上にもつながります。

AIを不動産業界に導入するメリット

AIを不動産業界に導入することで、業務の効率化や人手不足の解消など、さまざまなメリットを得られます。

具体的なメリットと得られる効果を解説するので、AIの導入を検討している方は参考にしてください。

業務の効率化

AIの導入は、業務の効率化につながります。

たとえば、これまで人間の手で行っていた顧客情報の管理・分析をAIにサポートしてもらえれば、より効率的かつ正確に必要な情報の抽出が可能です。

また、物件価格の設定や契約書の作成などの定型的なバックオフィス業務をAIに代行させることで、ほかの業務にリソースを割けます。

人材不足の解消

AI活用に伴う業務効率化は、従業員の業務量や負担を大幅に減少してくれます。

生産性の面で課題となっている業務でAIを有効に活用できれば、人材不足の問題の解消にも役立ちます。

また、AIは教育が不要なためすぐに業務へ投入でき、常に一定の質で稼働してくれます。

従業員の採用や人件費に課題を感じている企業こそ、AIの活用がおすすめです。

顧客満足度の向上

24時間365日対応可能なAIを採用すれば、顧客満足度を向上させられます。

たとえば、入居者からの問い合わせに対してAIチャットボットを活用することで、営業時間外の問い合わせにも瞬時に対応可能です。

また、AIは人間では処理できないような膨大なデータを高速で分析し、顧客の趣味嗜好や要望をもとにニーズに合う物件を提案してくれるため、物件提案のサポートに導入すれば、より顧客の満足度を高められます。

新たなサービスの創出

AIを活用すれば、新たなサービスの創出も可能です。

たとえば、ユーザーにいくつかの質問に答えてもらうだけで、ユーザーの好みや条件に合わせて最適な物件を紹介してくれる「物件紹介AI」や、過去の売買事例や物件と特徴をもとに物件の適正価格を算出してくれる「物件査定AI」など、AIだからこそ生み出せる価値を提供するサービスを創出できます。

独自のサービスを創出できれば、少子高齢化で競争が激化している不動産業界において、他社と差別化できる大きな材料になります。

不動産投資への参入障壁が下がる

不動産投資の分野でAIが浸透すれば、参入障壁が下がり、不動産業界の活性化につながります。

AIに市場データや物件情報を分析させれば、物件価値の適切な評価が可能なので、投資家はリスクを把握しやすくなり、投資への不安が緩和されます。

不動産投資に参入する人が増えれば、不動産の売買がこれまでよりも頻繁に行われ、不動産業界の活性化をもたらしてくれます。

AIを不動産業界に導入するデメリット

多くのメリットがある一方で、AIを導入するには2つのデメリットがあります。

AIの導入を検討している方は、デメリットも把握したうえでの選択をおすすめします。

AI人材が必要

AIを導入し使いこなすには、専門の知識を持ったAI人材が必要です。

特に自社でいちからAIを開発する場合は、プログラミングの知識はもちろん、統計学や数学の知識を持った人材による開発が求められます。

既製品のAIを導入する場合でも、運用するうえでAIに関する知識は欠かせません。

自社での教育が難しい場合は、新たにAI人材の採用がおすすめです。

採用にコストがかかったとしても、上手くAIを活用できれば、導入コストを上回る生産性や副次的効果を生み出してくれます。

自動化により人手が不要になる

AIによる自動化が成功すると、人手が不要になり、これまで業務を担当していた従業員の仕事がなくなってしまいます。

そのまま雇用し続けると人件費がかかる一方ですが、解雇すると不当な扱いとして認識され、大きな問題に発展しかねません。

そのため、これからAIを導入する方は、AIと従業員のリソース配分を明確に計画したうえで導入し、導入後も人的リソースを最大限に活用できるように準備しておきましょう。

不動産業界でAIを活用する際のポイント

不動産業界でAIを活用する際のポイントを抑えることで、AIをより効果的に運用できます。

AIを導入してその恩恵を最大限に受けたい方は、把握しておいてください。

AI活用の目的を定める

AIを導入する際は、明確な目的設定が重要です。

AIを活用してできることは幅広く、目的が明確でなければどのようなAIの導入が必要か決められません。

また、AIの導入にはコストと時間が伴うため、自社のリソースを効果的に使用するためにも、まずは企業のビジョンや既存事業、抱えている課題をもとに目的を定めてください。

たとえば、顧客からの問い合わせ対応に時間が取られているのであれば、AIを活用したチャットボットや自動応答システムなどの導入がおすすめです。

AI人材を育成・採用する

前述のとおり、AIを活用するには専門的な知識を持つAI人材の育成・採用が必要です。

とはいえ、AIの運用には、高度なプログラミング技術や数学、統計学の知識が求められ、自社でいちから育成するのは困難です。

加えて、市場のAI人材の需要は高く競争が激しいため、自社に合った人材の採用は、一筋縄ではいきません。

そのため、AIを導入する企業は、育成と採用どちらに舵を切るのか決定し、いち早く導入の準備を進めてください。

競合他社よりも早くAIを導入することで、差別化につながります。

長期的な視点を持つ

AIを活用して成果を出すには、長期的な視点が必要です。

AIの性能は、蓄積されたデータの数や試行錯誤、機械学習の回数によって向上します。

そのため、AIのアルゴリズムを理解したうえで、導入開始早々に大きな成果を求めるのではなく、長期的な視点で成果を目指すことで、より持続的にAIを活用できます。

データの管理に注意する

AIの性能は、そのアルゴリズム上、学習に使用されるデータの質と量に大きく依存します。そのため、AIの性能を向上させるには、質の良い膨大なデータが必要です。

ただし、データを収集・活用するうえで気を付けなければならないのが、データの管理です。

なかにはプライバシーに関わるデータを扱うこともあるため、流出などの問題に発展しないように適切な管理が求められます。

不動産業界のAI活用事例9選

具体的な不動産業界でのAI活用事例を解説します。

これからAIを導入する企業は、自社で活かせるポイントはないか参考にしてみてください。

マンションの価格査定

AIは、過去の不動産価格や市場の動向をもとに、適切な価格査定をサポートします。

これまでの価格査定は、経験豊富な専門家が手作業で行っていましたが、AIを活用すれば、大量のデータを高速に処理し、精度の高い価格査定を実現できます。

AIによる価格査定は、物件の特徴や周辺環境など、さまざまな要素を包括的に考慮したうえで価格を算出してくれるため、人間だけで行うよりも、適切な価格査定が期待できます。

実際に、AI不動産査定ツール（外部サイト）も展開されており、今後の普及に注目です。

不動産の仲介

AIを活用した価格査定と組み合わせれば、不動産仲介の自動化・効率化も可能です。

買主のデータをAIに学習させることで、ニーズを理解したAIがおすすめの物件を適切な価格で提案してくれます。

仲介業務を効率化できるのに加え、買主の物件探しの負担も軽減できるため、顧客満足度の向上にもつながります。

混雑状況の確認

AIは、物件の混雑状況の把握にも活用されています。

混雑状況の管理をAIに任せることで、物件の入居者数やエリア別の分布、入居者の属性などデータのダッシュボードでの可視化が可能です。

これまで人間の手で物件の空き・入居状況を管理していた企業は、AIに置き換えることで業務を効率化できます。

内見の自動化

AIの顔認証システムを活用すれば、不動産の内見の自動化が可能です。

たとえば、内見予定の顧客の顔写真を事前に提供してもらい、AIの顔認証システムに学習させれば、不動産会社の担当者が物件に行かなくても、顔認証で開錠が可能です。

また、音声認識を活用したAIやチャットボットを活用することで、顧客の物件に関する質問にもその場で回答できます。

顧客管理業務の自動化

AIは、顧客管理業務の自動化にも活用できます。

AIを活用して現在の入居者や仲介を行った買主・売主などの顧客の属性情報・過去の取引履歴を自動で分類・分析できるようにしておけば、これまでの管理業務が効率化され、時間を有効に活用できます。

また、一元化されたデータは、企業内でシェアし、認識のすり合わせや引き継ぎ目的での利用が可能です。

AIチャットボットによる営業力強化・業務効率化

AIチャットボットを活用すれば、顧客の問い合わせ対応に24時間対応できるだけでなく、営業力強化や業務効率化も実現できます。

実際に、AIチャットボットを営業活動に使用している企業もあり、自社の物件情報や地域の特性などを学習したAIチャットボットを自社のマニュアルとして活用しています。

営業マンは不明点があってもAIチャットボットに質問することで、瞬時に物件情報などのデータの確認が可能です。

マッチングシステムの開発

たとえば、不動産会社側で用意したアンケートに顧客に答えてもらうことでAIが顧客の思考や潜在的なニーズを把握し、最適な物件を紹介してくれるような顧客と物件のマッチングシステムを開発すれば、物件の紹介や仲介が効率化されます。

すでに同様のサービスを活用している企業もあり、顧客満足度向上にもつながることから、注目されています。

定型業務の自動化

AIを活用することで、契約書の作成や不動産情報の入力といった定形業務の自動化が可能です。

AIは、一連のルールにもとづいた繰り返しの作業が得意であるため、定型業務の流れを学習させれば、人間の手を加えなくても、自動で人間と同じ質の作業を行ってくれます。

このことで、普段定型業務を行っていた従業員をほかの業務に専念させられます。

Webサイト・SNSからの情報収集

AIは、WebサイトやSNSからの情報収集への活用にもおすすめです。

市場の動向や顧客の口コミ、競合他社の動きなど、自社ビジネスの見直しや他社との差別化につながるような情報を自動的に収集・分析することで、マーケティング活動や戦略策定に活用できます。

AI導入による不動産業界の今後

不動産業界にAIが導入されることで、今回の記事で紹介したさまざまな恩恵を受けられます。

スポーツやエンタメなどのほかの業界と比べ、AIの導入が進んでいない不動産業界ですが、今後AIが導入されることで、不動産業界特有の課題の解決を図ることができ、さらなるAIの活用が進められます。

しかし、AIによる自動化が進めば、人間だからこそできる仕事がより重要となり、仲介業者としての在り方も考え直さなければいけません。

これからAIを導入する方は、AI導入後の自社の将来像を明確にしたうえでの運用が大切です。

まとめ

この記事では、不動産業界でAIを活用するメリットやデメリット、具体的な活用事例を解説しました。

AIを活用することで、これまで多くの時間を費やしていた事務業務の効率化・自動化や、営業力の強化を実現できます。

また、適切な査定や物件紹介を行えるシステムを開発できれば、顧客満足度の向上だけでなく、競合他社との差別化も可能です。

AI導入を検討している方は、今回の記事を参考に、メリットやデメリット、活用事例を把握したうえで、導入に向けて取り組んでください。