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CPUグリスのおすすめの選び方とは?|用途別に分かりやすく解説
目次
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CPUグリスの基礎知識
CPUグリスは、冷却装置との間に生じる微細な隙間を埋め、熱が伝わりやすい状態を支える材料として用いられています。
ここでは、適切に冷却するために押さえておきたいCPUグリスの基本知識を、順を追って紹介します。
グリス品質の違いによって発生するトラブルとリスク
CPUグリスの品質は、冷却性能とその効果をどれだけ維持できるかに直結します。
一定以上の品質が確保されていない製品では、熱や振動の影響により劣化が早く進み、硬化やオイル分離が発生しやすくなるでしょう。
硬化が進行した場合、塗布面の密着性が失われていき、CPUと冷却装置の間に再び空気が入り込む状態が生じます。空気は熱を通しにくいため、熱伝導が阻害され、温度上昇が目立ち始めます。
温度上昇が続く環境では、処理速度が自動的に抑制されるサーマルスロットリングが発生することがあり、性能を期待どおりに引き出せなくなるでしょう。
さらに、冷却不足によってファンが高回転を強いられる場面が増えると、騒音面の悪化や余計な電力消費にもつながります。
高負荷運用を前提としたシステムでは、劣化したグリスを放置することで不安定な温度推移が常態化し、停止リスクや業務影響が大きくなる懸念があります。
信頼性の高いグリスを採用することは、過熱による故障やトラブルを未然に防ぐ上で基本的な対策です。
CPUとクーラーの間を埋め、熱伝導を最適化する役割
CPUグリスは、CPUから発生した熱を冷却機構へ確実に伝達するための熱伝導材です。CPUと金属製クーラーを組み合わせた場合でも、双方の表面には微細な凹凸が残ります。
金属面同士が完全に密着することはなく、微小な空間が形成されます。ここへ空気が入り込むと、熱が伝わりにくくなるため、放熱が十分に行われません。
この課題を解決する目的で、ペースト状のCPUグリスが使用されます。CPUと冷却装置の隙間へ充填されることで、金属同士の接触面積が増え、熱の伝導経路が安定します。
伝熱面の整合性が高まることで、発熱量が大きい処理を実行する場面でも温度上昇が抑制され、CPU本来の性能を発揮しやすい状況が整うでしょう。
また、適切な塗布によって熱抵抗のばらつきが減り、冷却設計における制御性が向上します。高負荷環境での温度管理を考える上で、CPUグリスは放熱経路の確立を支える基盤的な要素です。
グリスの品質が長期稼働や保守コストに与える影響
企業環境では、サーバー機器やワークステーションが長時間連続で稼働するケースが一般的です。そのような運用状況では、CPUグリスがどれだけ長期間、安定した性能を維持できるかが重要になります。
品質が不十分な製品では、熱や振動による劣化が相対的に早く進みやすく、硬化やオイル分離が短期間で発生するリスクが高まります。密着性が損なわれると、温度制御に余裕がなくなり、負荷が高まるたびに冷却システムが追加の動作を必要とします。
冷却システム側への負担が増えると、ファンモーターや周辺部品の寿命が縮まり、交換サイクルが短縮される可能性があります。保守頻度が増えるほど、作業時間や機器停止の調整が発生し、結果的にコスト上昇につながるでしょう。
さらに、グリス劣化による脱着性の悪化が生じた場合、クリーニングや再塗布作業が複雑化し、対応工数が増加します。
品質の高いCPUグリスを採用することは、単に温度管理を最適化するだけでなく、設備寿命や保守計画の安定化にも結果として反映されます。
ただし、一般的なCPUグリスでも数年単位で少しずつ劣化が進むため、長期連続稼働のシステムでは定期的な状態確認が有効です。
長期稼働を前提とする運用では、初期段階から信頼性を確保する取り組みが、総合的なコスト削減につながるでしょう。
初期状態で塗布されているグリスの確認と扱い方
メーカー製品では、あらかじめCPUグリスが塗られた状態で出荷されます。幅広い構成に対応できるよう、汎用的な性能を持つグリスが選ばれることが多く、どの機器でも一定の冷却力を発揮できるように設計されているからです。
ただ、各社の採用基準には違いがあり、搭載されているCPUの発熱量や使用目的との相性が、必ずしも最適になるわけではありません。
企業で使用される機器は、連続運用や高負荷作業が求められるケースもあります。その場合、導入直後に温度の傾向を把握しておくと、冷却に余裕があるかどうかを早い段階で判断できます。
また、輸送工程で冷却装置がわずかに浮いたり、押し付けが弱まったりする可能性もあり、初期状態のままでも問題ないかを確認しておくと安心です。
CPUグリスの選び方ポイント
冷却性能を安定させるためには、用途に適したCPUグリスを選ぶことが欠かせません。発熱状況や運用条件によって求められる特性が変わり、選定基準への理解が冷却体制の最適化につながります。
ここでは、CPUグリスの選び方のポイントを詳しく解説していきます。
使用環境とCPU性能に合わせたグリス選定基準を把握する
CPUグリスの選択は、処理性能や稼働環境との整合性を確認した上で判断することが基本です。
高性能CPUほど発熱量が増えるため、業務内容によって求められる冷却能力が大きく変わります。
文書作成や一般的な業務システム中心の構成であれば、汎用的な性能を持つ材料で対応可能です。一方、連続稼働が必要なサーバー用途や、動画処理・3Dレンダリングを行うワークステーションでは、余裕を持って温度を抑制できる材料が求められます。
負荷が断続的に発生する環境では、発熱ピークを踏まえた選定が重要です。高負荷時に温度が安定していることが、結果として業務継続性の確保につながります。
さらに、静音性や省電力性を重視する運用では、冷却不足がファン回転数の増加につながる場合があるため、設備全体の効率を見据えた判断が必要です。
CPUグリスは、処理性能の維持と装置寿命の管理に関わる要素です。使用環境とCPU性能の双方から適切な基準を設定し、設備導入時点で冷却体制を整えておくことが、長期的な安定稼働につながります。
塗布品質や絶縁性など、製品特性の安定性を確認する
CPUグリスを選ぶ際は、熱伝導性だけでなく、**電気的な性質(導電性/絶縁性)**や塗布のしやすさといった特性も重要です。
多くのシリコン系・セラミック系グリスは、熱は通しやすい一方で電気をほとんど通さない非導電タイプとして設計されており、多少はみ出してもショートのリスクが低く、安全性の面で扱いやすい特長があります。
一方で、銀・アルミ・銅などの金属粒子を含むグリスや液体金属タイプには、電気を通す製品も存在します。塗布が広がって基板や周辺部品に触れるとショートの原因となるため、こうした製品を採用する場合は、仕様書で「電気伝導性の有無」を必ず確認し、塗布量や作業手順の管理を徹底することが不可欠です。
また、CPUグリスは CPU とクーラーだけでなく、周辺のプラスチック部品やゴムシールなどと接する位置に用いられることもあります。材質との相性が悪いと、化学反応や硬化によるひび割れ・収縮を招くおそれがあるため、対応素材が明示されている製品や、長期安定性の検証実績がある製品を選ぶことが望ましいです。
塗布品質を安定させるには、粘度・揮発性・硬化挙動などが一定で、薄く均一な膜を作りやすいグリスを選ぶことがポイントです。作業者が変わっても膜厚や塗布パターンを再現しやすい材料を採用することで、冷却性能のばらつきを抑えつつ、設備ごとの標準手順や保守ルールも整えやすくなります。
長時間の安定稼働を支える持続性を重視する
CPUグリスは、運用が続くにつれて少しずつ硬化や分離が進む消耗材です。長期稼働が前提となる企業機器では、性能が初期状態から大きく落ちないことが重要になります。
発熱と冷却が絶えず繰り返される環境では、金属との密着性が損なわれにくい材料を選ぶことで、温度の変動幅を小さく保てます。温度安定性が高まるほど装置負荷も軽減され、業務停止リスクの抑制につながるでしょう。
持続性は、単に劣化しにくさだけを指しません。劣化の進行が緩やかであること、安定した状態が長く続くこと、再塗布までの期間を計画立てて管理できることも含まれます。
連続稼働が続く環境では、冷却効率が低下した状態を放置すると、他部品への負荷や保守作業の増加につながります。長期間にわたって安定性を維持できる材料を採用することで、システム全体の信頼性を高い水準で保てるでしょう。
購入段階で持続性を完全に見極めることは困難ですが、導入後のモニタリングによって状態を把握できます。
温度推移やファン制御の変化から兆候を捉え、適切な時期に再塗布や点検を行う運用体制が効果を発揮します。
過剰な点検回数を設ける必要はありません。しかし、年単位のサイクルで状態確認を行うと、設備寿命の延伸と保守コストの抑制に結びつきます。
コスト効率とメンテナンス性のバランスを評価する
CPUグリスは少量単位で販売され、製品ごとに価格帯や容量、取り扱い特性が異なります。調達コストを抑えつつ冷却性能を維持することが理想的な選択です。
ただし、価格のみで判断すると劣化が早まり、保守作業が増える要因にもなります。設備運用では、購入費用と保守頻度の両面から総合的に評価するようにしましょう。
容量の違いは再塗布回数へ影響し、必要量の把握が重要です。高粘度かつ高性能の材料は熱伝導に優れますが、塗布時の専門性が高く、施工時間が増える傾向があります。
作業工数が多い現場では、粘度が一定で扱いやすい材料を選ぶことで、保守効率を高められます。
複数台の機器を運用する企業では、製品の統一性も管理上の要点になるでしょう。塗布特性が大きく異なる材料を混在させると、膜厚や施工精度の均一化が難しいです。トラブル発生時の対応も煩雑化します。
構成に適合した製品を統一することで、点検手順や試験工程の標準化が実現しやすくなります。
CPUグリスの種類と特徴
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CPUグリスには、構成素材や熱伝導特性の違いによって複数のタイプが存在します。
使用環境や冷却設計に応じて適切な種類を選ぶことで、システム全体の性能を安定的に維持できる状態を保つことが可能です。
ここでは、代表的なCPUグリスの種類と各特長についてご紹介します。
シリコン系(安定性とコストバランスに優れた汎用タイプ)
シリコン系グリスは、基油にシリコンオイルを使用したタイプで、耐熱性・耐寒性・化学的安定性に優れています。
金属、樹脂、ゴムなど多様な素材との相性がよく、長期間の使用でも劣化や硬化が起こりにくい点が特長です。
汎用性が高く、一般的な業務用パソコンから産業機器まで幅広く採用されています。コストバランスにも優れており、補充や交換が容易なため、定期的な保守が必要な環境でも安定した運用を維持できます。
長期稼働を前提とした企業システムにおいて、安定性と扱いやすさを両立したスタンダードタイプです。
セラミック系(絶縁性と安全性を重視)
セラミック系グリスは、微細なセラミック粒子を配合し、優れた絶縁性と熱伝導性を両立したタイプです。
電気を通さないため、塗布のはみ出しや液漏れによるショートのリスクを防げます。粒子密度が高く、熱を均一に伝えるため、CPU表面の冷却を効率化できます。
金属粒子を使用しない構成により、化学的安定性も高く、長期的な使用でも酸化や腐食の心配が少ない点も強みです。
安全性を最優先する設計方針の企業や、精密機器、医療機器、制御装置など、導電リスクを回避したい現場に適した選択肢です。
金属・ナノ粒子系(高熱伝導率で高負荷環境に対応)
金属・ナノ粒子系グリスは、銀やアルミ、銅などの金属微粒子、あるいはナノレベルの熱伝導素材を配合した高性能タイプです。
粒径が非常に小さく、密度の高い熱伝導経路を形成するため、高発熱CPUや長時間の高負荷処理でも温度上昇を効果的に抑制します。
粘度が一定で塗布しやすく、冷却装置との密着性を高めやすい点も実務上の利点です。処理性能を重視するワークステーション、研究開発用PC、映像処理サーバーなどで採用されており、冷却効率と運用安定性を両立できるタイプです。
液体金属タイプ(高性能だが導電性や管理に注意が必要)
液体金属タイプは、非常に高い熱伝導率を持つハイエンドモデルです。CPUとヒートシンクの隙間をほぼ完全に埋めるため、冷却性能はほかのタイプを大きく上回ります。
主成分としてガリウムやインジウムを含む製品が多く、熱伝導効率は優れる一方で導電性を持つ点には注意をしましょう。
塗布時にわずかでも基板へ漏れるとショートを引き起こす可能性があるため、施工環境と管理手順の徹底が不可欠です。
温度上昇の余地を最小限に抑えたいオーバークロック運用や高性能サーバー用途で選ばれる、上級エンジニア向けの高精度タイプです。
BTO発注時に確認すべきCPUグリス関連のチェックポイント
BTO(Build To Order)システムの発注では、CPUや冷却装置の構成だけでなく、熱伝導を支えるCPUグリスの仕様確認も重要な工程です。
発熱設計や運用条件に応じて適切な材料が採用されているかを把握しておくことで、導入後の安定稼働や保守計画の精度を高められます。
ここでは、BTO発注時に確認しておきたいCPUグリス関連のポイントを詳しく解説していきます。
採用されているグリスの種類と性能指標を確認する
BTO発注では、構成表だけでは把握しづらい部分としてCPUグリスの仕様があります。発注前にメーカーへ問い合わせ、採用品の種別や性能指標を明確にしておくことが重要です。
熱伝導率などの数値は開示されないケースも多いため、同等製品の採用実績や運用実績を確認すると判断精度が高まります。
自社の動作要件(長時間稼働・静音・温度上限など)に対して十分な仕様であるかを、導入検討段階で整理しておくことが望ましいです。
塗布方式や品質管理基準を確認する
同じグリスを使用していても、メーカーによって塗布方式や管理精度が異なります。自社ラインでの自動塗布か、外注組立かによって品質の一貫性が変わるため、製造プロセスの管理体制を確認しておくと安心です。
特にBTOでは仕様変更や再組立が発生する可能性もあるため、工程管理や再施工手順が社内で標準化されているかを事前に把握しておくことが、導入後の保守対応をスムーズに進める鍵となります。
高発熱構成での冷却設計の適合性を確認する
ハイエンド構成を発注する際は、CPUやGPUなどの発熱量を踏まえた冷却設計が標準仕様で十分かを確認する必要があります。
BTOメーカーによっては同一モデルでも冷却グリスやヒートシンクの仕様が異なることがあるため、温度試験の実施基準や評価条件を確認しておくと安心です。
特に企業用途では、連続稼働時の温度上限が保証対象外になる場合もあるため、運用条件を踏まえた設計適合性を事前にチェックしておくことが重要です。
メーカー保証範囲と保守サイクルを事前に確認する
BTO製品の保証書には、CPUグリスの再塗布や経年劣化が明示されていない場合があります。企業運用では、保証対象外の範囲を明確にしておくことが、想定外の保守コストを防ぐ基本です。
交換・再施工を企業側で行う場合の手順や、サポート委託時の追加費用の有無も確認しておくと安心です。
保守契約や延長保証を検討する際には、再塗布周期や保証継続条件も含め、運用計画全体と照らし合わせて整理しておきましょう。
まとめ|CPUグリスの正しい選び方が安定稼働を支える
CPUグリスは、性能や価格だけでなく、使用環境や冷却設計との相性を踏まえて選定することが重要です。
グリスの種類や塗布品質、保証条件などを理解しておくことで、導入後の安定稼働と保守効率を両立できます。
長期的な視点で性能を維持するためには、CPUグリスの選び方を正しく知ることが大切です。
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