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ARの作り方は?ARの種類から制作手順、ツール、注意点まで解説
この記事では、ARの作り方だけでなく、ARの概要から種類、VR・MR・XRの違いまで解説します。
おすすめのAR制作ツールや制作するうえでの注意点もあわせてお伝えします。
自社でARの制作を検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
目次
ARとは?
ARは「Augmented Reality」の略称で「拡張現実」のことです。
具体的には、現実世界にバーチャルのコンテンツ・資格情報を表示させることで、現実を仮想的に拡張します。
たとえば、スマートフォンのカメラを通して部屋のなかにデジタルで作成された家具を設置したり、ゲームのキャラクターを表示させてまるで現実世界に存在するかのような体験をしたりできます。
ARは、スマートフォンやタブレットから誰でも簡単に体験でき、開発者側も現実世界に手軽に情報を加えられることから、ゲームやインテリア、不動産、広告など、幅広い分野で活用されています。
ARの歴史
2010年代に入ってから注目を集め始めたARですが、実は1990年代から世界でAR技術が活用されています。
アメリカでは、米国アームストロング空軍研究所のパイロット向けの訓練デバイス「Virtual Fixtures」や、コロンビア大学のレーザープリンター用の保守システム「KARMA」にAR技術が活用されています。
KARMAは、専用のヘッドマウントディスプレイを装着することで目視では確認できないレーザープリンター内部の情報を表示するシステムで、保守担当者の作業効率向上を実現しました。
日本でも2016年の「ポケモンGO」のリリースがAR普及の大きなきっかけのひとつとなり、今ではさまざま分野での活用がみられています。
AR・VR・MR・XRとの違い
ARと並べて挙げられる言葉に「VR」・「MR」・「XR」があります。
それぞれの特徴とARとの違いを解説するので、区別がついていない方は、ぜひ参考にしてください。
ARとVRの違い
ARが「拡張現実」であるのに対し、VRは「仮想現実」を指します。
VRとは「Virtual Reality」の略称で、専用のゴーグルを装着することで現実世界の視覚情報を遮断し、CGで作られた仮想空間を現実世界のように体験できるのが特徴です。
つまり、ARは現実が主体ですが、VRは仮想空間が主体である点に違いがあります。
また、VRは、高い没入感を味わえて、よりリアルなシチュエーションを表現できることから、バーチャルショップ・展示場、医師やパイロットの研修、プロモーションなど幅広い用途で活用が進んでいます。
ARとMRの違い
MRとは「Mixed Reality」 の略称で、現実世界と仮想空間を組み合わせた「複合現実」を指します。
現実世界が主体のARと仮想空間が主体のVRの中間として捉えるとイメージしやすいでしょう。
わかりやすい例として、トヨタ自動車では、こちらの動画(外部サイト)のように、専用のゴーグルを装着することで現実世界に作業手順や仮想のオブジェクトを表示させるMR技術を活用し、自動車の塗装の膜厚検査や工場の設備移設の生産性向上を実現しています。
ARとXRの違い
XRとは「Extended Reality」の略称で、現実世界と仮想の空間やオブジェクトを組み合わせたARやVR、MRなどの技術の総称です。
そのため、ARはXRの一部として認識しておくと良いでしょう。
ARの種類
ARの種類は、主に「マーカー型」・「GPS型」・「空間認識型」・「物体認識型」の4つにわけられます。
マーカー型
マーカー型は、スマートフォンのカメラなどから現実世界に配置されたQRコードや対象物の画像をマーカーとして取得・登録することで、ARコンテンツを表示させるタイプのARです。
その特性から「ビジョンベース型」や「画像認識型」と呼ばれることもあります。
明確なマーカーを使用するため、デバイスが認識しやすく、表示させたい場所へのARコンテンツの表示が可能です。
商品パッケージや名刺、展示会などでの活用が見られます。
空間認識型
空間認識型は、現実世界の空間の大きさ・高さ・奥行きなどの特徴を認識し、ARコンテンツを表示させるタイプのARです。
マーカーを認識するマーカー型に対し、現実世界の空間をカメラやセンサーが認識する空間認識型は、マーカーレス型と呼ばれることもあります。
空間認識型ARの代表例が、部屋に家具や家電を設置してシミュレーションできるアプリで、すでに多くのアプリがリリースされています。
物体認識型
物体認識型は、カメラなどで対象物の360°の立体的な情報を認識し、対象物に対してARコンテンツを表示させるタイプのARです。
対象物を認識するという点ではマーカー型と同じですが、物体認識型はマーカーに依存しないため、より幅広いシチュエーションでの活用が可能です。
大きな流行を生んだ「ポケモンGO」にも物体認識型の技術が活用されており、そのほかにも教育や医療、Eコマースの分野での活用が見られています。
GPS型
GPS型は、GPSによってデバイスの位置情報を認識し、ARコンテンツを表示させるタイプのARです。
具体的には、あらかじめ特定の場所に訪れたときにこのARコンテンツを表示させる、といった設定が可能なため、位置情報を利用した「ポケモンGO」などのゲームや観光サービス、ナビゲーションなどの用途での活用が見られています。
また、その特性から「ロケーションベース型」と呼ばれることもあります。
ARの活用に必要なデバイス
ARの活用にはスマートフォンやスマートグラスといったデバイスが必要です。
それぞれの特徴や活用方法を解説します。
スマートフォンで活用
スマートフォンは、多くの人が所有しており、高性能なカメラが搭載されていることから、ARを普及させるための主要な手段として活用されています。
ARコンテンツの多くがスマートフォンに対応しており、多くのアプリがリリースされているため、誰でも手軽にARを体験できます。
スマートグラスで活用
ARの活用には、スマートフォンだけでなく、スマートグラスも用いられています。
スマートグラスとは、メガネ型のデバイスで、装着することで現実世界の視界にデジタル情報が付与された状態を体験できます。
スマートフォンよりも没入感が高く、手が自由に使える点がメリットです。
そのため、製造業や医療などの業務で両手を使用する分野において有効です。
ARの作り方
ARの作り方は「プラットフォーム・ライブラリを活用する方法」と「ARサービスを活用する方法」の2種類にわかれます。
それぞれの特徴を解説するので、自社でAR制作に取り組みたい方は、どちらの方法が取り入れやすいか考えてみてください。
AR制作に適したプラットフォーム・ライブラリを活用する
AR制作に使用されるUnityやVuforiaといったプラットフォーム・ライブラリは、エンジニア向けに開発されているものが多いため、使いこなすには専門的な知識とスキルが必要です。
その一方で、無料で使用できるようなARサービスと比べて性能が高く、自由なカスタマイズが可能です。
そのため、たとえば自社でARアプリをリリースしたいといった企業には、プラットフォームやライブラリを活用したAR制作が適しています。
ARサービスを活用する
ARサービスは、コーディングの知識が少ない方や時間が限られている方でも手軽にARを制作できるサービスです。
なかにはアプリのダウンロードが不要で、ブラウザからARを制作できるサービスもあります。
そのため、一時的なイベントや展示会などでARの活用を検討している企業や、具体的な活用方法を決めていないが、まずはAR制作を体験してみたいという企業におすすめです。
おすすめのAR制作ツール
おすすめのAR制作ツールを紹介します。
高品質なARを作れるものから、初心者でも手軽に制作できるものまで幅広く紹介するので、ぜひ参考にしてください。
Unity
Unity(外部サイト)は、ユニティ・テクノロジーズ社が提供するゲームエンジンです。
立体的な3次元データの扱いに優れており、ARやVRといった仮想空間を構築できます。
また、パソコン環境のみならず、iPhoneやAndroidといったスマートフォンにも対応しているため、幅広いプラットフォームにARを展開できます。
使いこなすには専門的な知識やスキルが必要ですが、ARアプリを開発したい企業におすすめです。
最低要件 | Windows | macOS |
OSバージョン | Windows 10 version 21H1 (build 19043) or newer (x64 versions only) | Big Sur 11.0 |
CPU | SSE2 命令セットをサポートする X64 アーキテクチャ (現在流通しているIntelおよびAMDのCPUの大部分はX64に対応) |
SSE2 命令セットをサポートする X64 アーキテクチャ (Intel 製プロセッサー) Apple M1 以上(Apple 製シリコンベースプロセッサ) |
グラフィックスAPI | DX10、DX11、DX12 対応のGPU ※DX=DirectX(表記は公式サイトに準拠) |
Metal 対応の Intel と AMD GPU |
追加要件 | ハードウェアベンダーが公式にサポートしているドライバー | Apple officially supported drivers (Intel processor) Rosetta 2 is required for Apple silicon devices running on either Apple silicon or Intel versions of the Unity Editor |
Unityを利用した開発に適したPCスペックは「ゲーム開発用PCに必要なスペックとは?」で、ご紹介しております。合わせてご覧ください。
Vuforia
Vuforia(外部サイト)は、スマートフォンやタブレット、スマートウォッチなど、幅広いデバイスに対応したARライブラリで、開発環境を選ばず、それぞれのプラットフォームごとの開発が不要なのが特徴です。
また、マーカーや対象物を認識するトラッキングの精度が高いのも特徴のひとつで、マーカー型のARを制作したい方におすすめします。
最低要件 | Windows | iOS | Android |
OSバージョン |
Windows 10 のバージョン 1803 以降または Windows 11 を実行している場合、次の Windows デバイスがサポートされます。
|
iOS 14.0 以降を実行しているデバイスでサポート | Android オペレーティングシステムバージョン 8.0 以降を持つデバイスでサポート |
ARKit
ARKit(外部サイト)は、Apple社が提供するARライブラリです。
ARKitでは、人の動きをリアルタイムでキャプチャしてARに反映させる「モーションキャプチャ」や、床・壁・窓といった周囲の環境を認識してラベルを付ける「シーンジオメトリ」の機能を使って高精度なARを制作できます。
また、Swift言語を使用して開発を行うので、一定のプログラミングスキルを求められる点に注意が必要です。
ARToolKit
ARToolKit(外部サイト)は、日本発のAR制作ライブラリです。
iOS・Android・Windows・Mac・Linuxなどの幅広いプラットフォームに対応しており、デスクトップアプリやPC向けARアプリの制作実績が多数あります。
ARToolKitを活用するには、UnityやJava、C#の知識と技術が求められるので、自社でリソースを確保できる場合は活用を検討してみてください。
また、2015年にARToolworks社よりARToolKitのオープンソース化が発表され、ライセンスは現在LGPLv3での運用のみとなります。
Spark AR Studio
Spark AR Studio(外部サイト)は、Meta社が提供するAR開発ツールです。
柔軟性と拡張性に優れたプラットフォームが備わっているので、コーディングなしでARを制作できます。
また、制作したARは簡単にInstagramやFacebookに公開できるので、自社でSNSアカウントを運営している企業におすすめです。
Unreal Engine
Unreal Engine(外部サイト)は、ゲーム開発で広く使用されているフレームワークで、ARアプリの構築にも活用できます。
高度なレンダリング技術とビジュアルエフェクトにより、現実世界に溶け込む鮮明でよりリアルなARの制作が可能です。
また、Unreal Engineには、Blueprintsというビジュアルスクリプティングシステムが備わっており、一般的にコーディングスキルを持ったプログラマーしか扱えなかったコンセプトとツールを、デザイナーやコーディング初心者でも使えるようになります。
推奨スペック | Windows | macOS |
OSバージョン | Windows 10 64ビット | 最新のMacOS Big Sur |
プロセッサ | クアッドコア Intel Intel または AMD、 2.5 GHz またはそれ以上のプロセッサ | クアッドコアIntel、2.5GHz以上 |
メモリ | 8 GB RAM | 8 GB RAM |
ビデオカード/DirectX バージョン | DirectX 11 または DirectX 12 対応のグラフィックカード | Metal 1.2対応のグラフィックカード |
Unreal Engineを利用した開発に適したPCスペックは「ゲーム開発用PCに必要なスペックとは?」で、ご紹介しております。合わせてご覧ください。
COCOAR
COCOAR(外部サイト)は、ARを活用したプロモーションにおすすめのツールです。
ARフォトフレームや3Dコンテンツ、ARスタンプラリーなどの制作が可能で、AR化したいデータをドラッグ&ドロップするだけで簡単に制作できます。
5,300社以上の導入実績がある、初心者から技術者まで幅広く活用できるツールです。
LESSAR
LESSAR(外部サイト)は、アプリなしでARを制作・体験できるクラウドサービスです。
AR化したいデータをLESSARの操作画面にドラッグ&ドロップするだけで、マーカー型ARやパノラマAR、顔認証ARなど、さまざまARを制作できます。
無料で利用できるので、まずは手軽にARを作ってみたいという方におすすめです。
MakerPark
MakerPark(外部サイト)は、スマホで簡単にARを体験できるサービスです。
MakerParkのホームページから脚立や宅配ボックス、オフィスチェアなど、さまざまな商品のQRコードを読み取るだけで、現実世界に対象の商品を配置できます。
また、MakerParkではAR制作を1モデル78,000円から行っているので、自社の開発リソースを割かずにARを制作したい方にもおすすめです。
ARを制作する際の注意点
ARを制作する際には、取得した個人情報の取り扱いや利用規約に注意が必要です。
具体的な内容を解説するので、ARの制作を検討している方は、把握しておいてください。
個人情報の取り扱いには気を付ける
ARの制作では、ユーザーの位置情報やカメラの映像など、さまざまな個人情報の取り扱いが伴うケースがあります。
ユーザーのプライバシーに関わる情報を扱う際は、厳重なセキュリティ対策と適切なプライバシーポリシーの遵守が重要です。
適切な管理が行われていないと、情報漏洩に発展しかねないので、十分に注意しましょう。
自作するための環境を整える
ARの制作には、前述したようなプラットフォームやツールを使用します。
制作に取りかかる前に、自作するために必要な環境を洗い出し、スムーズに取り組めるように環境を整えておきましょう。
また、ARを作成するには、ARの開発環境だけでなく、使用するプラットフォームやツールを使いこなすためのスキルも必要です。
AR制作を経験したことがない方は、未経験でもARが作れるツールやサービスを活用しましょう。
より高品質なARを制作したい方は、専門的な知識とスキルを持った人材の確保を検討してください。
利用規約を明確にする
制作したARをアプリとしてリリースする場合は、利用規約を明確に設定しましょう。
利用規約を設けておくことで、万が一アプリのユーザーとの間にトラブルが発生しても、被害を最小限に抑えられます。
トラブルが発生した場合の免責事項や禁止事項などを利用規約に明記しておくと良いでしょう。
ARの活用事例
最後に、ARの活用事例を紹介します。
ARの制作を検討している企業は、自社での活用方法の参考にしてください。
LIFULL
住宅・不動産ポータルサイト「LIFULL HOME'S」などの企画・運営を行うLIFULL(外部サイト)は、2022年12月に不動産業界初となるARアプリ「Finding Serendipity(外部サイト)」のパブリックテストを開始しました。
Finding Serendipityでは、街歩きのなかで気になったことや発見したもの、そのときの感情をスタンプや写真などの「アンカー」としてその場で記録でき、記録したアンカーをほかのユーザーと共有することで、街の魅力を見つけられます。
日本経済新聞
日本経済新聞(外部サイト)は、新しい形で新聞を楽しめる「日経AR(外部サイト)」をスマートフォンアプリでリリースしています。
日経ARでは、日経ARに対応したマーカーが印刷された新聞紙をスキャンすることで、記事に関連した映像や音楽などのコンテンツが表示されます。
これまでの文字情報に加え、映像や音楽で情報を得られることで、よりわかりやすく、楽しく新聞を読めます。
Amazon
Amazon(外部サイト)では、ECサイトで扱う商品を部屋に表示できる「ARビュー(外部サイト)」を利用できます。
スマートフォンからECサイトサイトにアクセスしてARビュー対象商品の詳細ページから「部屋に表示(ARビュー)」をタップするだけで、スマートフォンのカメラが部屋の空間を認識し、3Dの商品が配置されます。
商品を購入した後のミスマッチを防げる便利な機能です。
戸田建設
総合建設会社の戸田建設(外部サイト)は、建設機械の配置計画を見える化する「建機AR(外部サイト)」を開発しました。
建機ARでは、タブレットを通して建設機械の3Dモデルを空間に設置でき、設置前と設置後の状況や建機稼働時の危険箇所等を視覚的に確認できます。
このことで、建設機械の配置計画にかかる時間と労力の削減を図りました。
スターバックス
スターバックス(外部サイト)は、プロモーションにARを活用しています。
たとえば、2023年2月には「さくらAR(外部サイト)」と題して、店頭ポスターのQRを読み取ると目の前にさくらの木や踊るキャラクターが表示される施策を実施しました。
自社で商品を販売している企業は、参考にしてみてください。
まとめ
この記事では、ARの概要から制作手順、おすすめのツール、制作するうえでの注意点まで解説しました。
ARは、効果的な販促やプロモーション、業務の効率化を実現できることから、さまざまな分野で活用が進んでいます。
ARの制作や活用を検討している方は、今回紹介したツールやサービスを参考に、自社で取り組んでみてください。
AR制作ツールのなかには専門的な技術が必要なものもありますが、無料で手軽に制作できるサービスもあるので、利用を検討してみてください。